トピックス

2024.10.25

J-PARC News 第234号

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■ J-PARC施設公開2024 ご来場ありがとうございました(9月28日)

 長かった残暑がようやく終わり、今年の施設公開は曇りの過ごしやすい日になりました。来場者は約1,000名で茨城県外からの方が4割程度を占め、広い敷地内にある実験施設や展示物を終了時刻近くまで熱心にご覧になり、活発な質問をいただきました。また、施設公開の一環として、東海村との連携協定締結式や、J-PARCハローサイエンスとして5件の講演も行われました。また来年、この場で皆様とお会いできることを楽しみにしています。

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■ 第4回J-PARCシンポジウムを開催(10月14~18日、水戸市民会館)

 J-PARCの全施設の利用運転開始から15年を迎える本年、「J-PARCの将来とJ-PARCが創る未来」をテーマとする第4回J-PARCシンポジウム2024 (J-PARC2024)が開催されました。
 初日は「J-PARCが創る未来、探る謎 -次世代のエネルギーから宇宙まで-」と題した市民公開講座を開催しました。J-PARCを利用した最先端の研究に携わる5名の研究者が、素粒子原子核物理学や中性子を用いた基礎科学から産業利用に至るまでの研究を分かりやすく解説しました。3連休の最終日、天候に恵まれた絶好の行楽日和でしたが、多くの皆様に足を運んでいただき、各講演後には時間に収まり切れないほどの質問をいただきました。
 15日から17日は、この15年間のJ-PARCでの様々な分野における成果、J-PARCのこれからの展開、そしてJ-PARCで生み出された技術・経験が世界の加速器施設・実験施設へ波及したという話題を中心として、プレナリーセッション、パラレルセッションやポスターセッションが行われました。素粒子原子核物理学から安全に至るまで、J-PARCで行われている全ての分野にわたって、口頭発表は93、ポスター発表は290を数え、約400名の国内外の研究者が活発な議論を繰り広げました。18日には、リニアック加速器、MLF、ハドロン実験施設、ニュートリノ実験施設の見学会が行われました。

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■ プレス発表

 (1)第3の固体「準結晶」における特異な格子振動の伝播
 - つかえながら進み、前後で伝わり方が異なる格子の波 -(9月27日)

 固体は原子配列の秩序性の違いで、結晶、アモルファス、準結晶の3つに大きく分類することができます。本研究では、MLFの冷中性子ディスクチョッパ型分光器「AMATERAS」やダイナミクス解析装置「DNA」を使用し、様々なエネルギー分解能で測定をすることで、準結晶AIPdMnの格子の波(フォノン)に非常に細かいギャップ構造があることを明らかにしました。また、シミュレーションとの比較から、準周期構造によりフォノンはいたるところで散乱され、つかえながら進んでいることが分かりました。さらに、フォノンの強度を詳細に調べると、準結晶におけるフォノンは、波の進行方向やエネルギーに対して非対称であることも明らかになりました。
 ギャップ構造の解明によって、準結晶における電子や磁性といった他の自由度ダイナミクスの理解についても指針を与えます。またフォノンの非相反性を利用して、フォノンの流れを制御する熱管理に準結晶が活用できると期待されます。
詳しくはこちら(J-PARC HP) https://j-parc.jp/c/press-release/2024/09/27001396.html

 

 

(2)新しい概念の磁性体を実験的に検証
 - 中性子散乱実験による交替磁性体の観測-(10月9日)

 交替磁性体は、強磁性体、反強磁性体に加え、両方の性質を併せ持つ新しい概念の磁性体として注目されています。本研究では、良質な大型単結晶MnTeを合成し、J-PARC MLFに設置されている高分解能チョッパー分光器「HRC」を用いて、中性子非弾性散乱実験を行いました。その結果、交替磁性体において理論的に予想されていた、マグノンのスペクトル分裂の観測に世界で初めて成功しました。さらに詳細な解析を行い、観測されたマグノンはスピン流を運ぶカイラルマグノンであることが明らかになりました。
 この発見は、交替磁性体の理解を深め、超伝導物質の探索に新たな指針を示すとともに、スピントロニクスデバイスの進歩に貢献します。将来的にはより高速で効率的な電子デバイスが実現し、我々の日常生活にも大きな変革をもたらす可能性があります。
詳しくはこちら(J-PARC HP) https://j-parc.jp/c/press-release/2024/10/09001400.html

 

 

■大空マルシェ2024に出展(10月5日、東海村)

 今年も東海村の四大まつりのひとつである「大空マルシェ」に出展しました。大神宮と村松虚空蔵堂の境内と参道にはさまざまなワークショップ、フードコート、ライブステージなどが並び、その一番奥で、J-PARCセンターが超伝導コースターの実演と光のまんげきょうの工作教室を行いました。雨が降ったりやんだりするあいにくの天気でしたが、家族連れなど、多くの皆様に立ち寄っていただきました。

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■ 舟塚2号墳で「歴史と未来の測定器」がミュオンの測定を開始(10月13日)

 3連休中日の爽やかな秋空のもと、昨年度子どもたちと製作した「歴史と未来の測定器」がついに舟塚2号墳に隣接する荒谷台住宅配水場地内に設置されました。
 トラックに乗せられた測定器をクレーンで吊り上げ、予定の位置に設置する作業はとても繊細で、参加した17名の子どもたちは、J-PARCセンターの藤井氏の実況説明を聞きつつ、固唾を飲んで見守りました。設置作業の終盤、測定器に防水シートをかける場面では、子どもたちもシートを持って作業を手伝いました。設置完了後に電源を入れると、パソコンの画面上にはミュオンの信号が現れ、子どもたちから歓声が上がりました。
 これから数か月、宇宙線ミュオンを測定しながらデータの解析を進めることになります。並行して、来月からは2台目の測定器製作に取り掛かります。どんな結果が出るのか、どんな測定器が完成するのか、今からとても楽しみです。

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■ ご視察者など

 10月9日 米国エネルギー省科学局局長代行兼次長 他

 

 

■ 加速器運転計画

 11月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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J-PARCさんぽ道 51 -J-PARCフォトコンテスト-

 J-PARCの主役は、光速近くまで加速された大量の陽子であり、その陽子をターゲットに当てて発生した中性子やミュオン、ニュートリノ、ハドロンなどの二次粒子です。しかし残念ながら、これらはいずれも私たちの目には見えません。それでもJ-PARCでは、写真という手段を使って、多くの人にJ-PARCの研究活動を理解していただこうと考えています。世界の最先端を行く巨大な施設や装置は無味乾燥なものかもしれませんが、その一部を拡大したり、光線をうまく利用したり、人物や自然の風景を入れることにより、見る人にときめきや安らぎを感じさせることができます。
 フォトコンテストは毎年この時期に行われ、今年で11回目になります。入賞作品は来年のカレンダーを始め、様々な広報活動で使用する予定です。

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