専門用語集 【 か行 】

用語解説

【 あ 】  【 か 】  【 さ 】  【 た 】  【 な 】  【 は 】  【 ま 】  【 や 】  【 ら 】  【 わ 】

  

用語の後ろについている分類は、それぞれ

(※加):加速器研究及び施設
(※物):物質・生命科学研究及び施設
(※素):素粒子・原子核研究及び施設
(※換):核変換研究及び施設
(※他):その他の関連用語
を表す。

  

【 か 】

  

  • 階層型 (※換)

 核変換サイクルを設計する際の基本的考え方の一つで、商用発電サイクルにマイナーアクチニドや長寿命核分裂生成物の変換専用の核燃料サイクルを付加したもの。加速器駆動未臨界炉 (ADS) あるいは専焼高速炉 (ABR) といったマイナーアクチニド変換専用システムを核変換サイクルの中心に据え、商用発電サイクルと核変換サイクルの2つのサイクルがそれぞれに最適化を図り、独立に発展が可能で、商用発電サイクルの形態に依らず、そこからのマイナーアクチニド発生量に見合った規模の核変換サイクルを用意することができるという特徴がある。

  • 核種 (※換)

 特定の原子番号と質量数により特定される元素の種類のこと。例えば、ウラン元素には、核種としてU-235(原子番号92、質量数235)やU-238(原子番号92、質量数 238)などが含まれている。

  • 核種分離技術 (※換)

 高レベル放射性廃棄物に含まれる核種を、それぞれの核種の物理的あるいは科学的特徴を利用して、核変換の方法や利用目的に応じていくつかのグループ、元素あるいは核種に分離する技術。

  • 核燃料サイクル (※換)

 天然ウラン等が濃縮、加工等を経て核燃料として原子炉で利用され、核燃料として利用された使用済燃料からプルトニウム等を取り出し再び核燃料として利用されること、及び、一連の過程から発生した放射性廃棄物が処理処分されること、これら全ての過程を総合した体系のこと。

  • 核破砕反応 (※物、※素、※換)

 加速器などを用いて約1億電子ボルト(100MeV)以上の高エネルギーにまで加速した陽子を、水銀、鉛ビスマス、鉛、タングステン、タンタル、ウラン、炭素等の標的に入射すると、高エネルギー陽子が標的中の原子核と激しく衝突し、そのエネルギーで標的の原子核をバラバラにする。バラバラになった原子核から中性子、中間子などの多数の2次粒子が放出される反応を核破砕反応と呼ぶ。

  • 核破砕中性子源 (※物)

 核破砕反応により多量の中性子を放出させ、それを種々の実験に利用するための中性子源。原子炉などで原子核分裂による中性子源(原子炉中性子源)と比較して、パルスではあるが約100倍の強度を有する中性子を発生させることができる(パルス中性子源)。加速される陽子ビームの電圧(エネルギー)と、電流(陽子の数)の積が、発生する中性子の量に比例することから、核破砕中性子源の強度をワット(W)で表す場合が多い。J-PARCの核破砕中性子源強度は1MW(1000kW)。

  • 核破砕中性子源の中性子利用 (※物)

 核破砕中性子源の核破砕反応により生成した高エネルギー中性子(温度換算で数百億℃)は、種々の実験に利用するにはエネルギーが高すぎ(物質を透過してしまうため反応しない)る。そこでモデレータ中の液体水素中を透過させることにより冷やし(エネルギーを下げ)、温度換算で-250℃程度の実験に適したエネルギー(数meV程度)にして、多様な中性子利用実験装置に中性子ビームとして供給する。

 J-PARCの中性子利用実験装置では中性子ビームを利用した様々な実験が行なわれ、ライフサイエンス、工学、情報・電子、医療など、広範な分野の研究展開が期待されている。

  • 核反応 (※換)

 原子核と原子核、あるいは原子核と陽子、中性子、電子、γ線等の衝突によって起こる現象のこと。具体的には、捕獲、核分裂などがある。

  • 核反応断面積 (※換)

 原子核同士または原子核と中性子・陽子などの素粒子との衝突によって起こる反応を核反応といい、核反応の起こる確率を核反応断面積という。

  • 核分裂生成物 (FP) (※換)

 ウランやプルトニウム等の核分裂に伴って生じた核種及びその一連の放射性崩壊で生じる核種のこと。大部分が放射性であり、その半減期は1秒以下のものから数百万年に及ぶものまで幅広い。

  • 核分裂性物質 (※換)

 比較的エネルギーが低い熱中性子との相互作用によって核分裂を起こす物質の総称。ウラン235が代表的なものである。

  • 核変換 (※換)

 原子核が核反応により変換し、ある核種が他の異なる核種に変わる現象のこと。

  • 核変換技術 (※換)

 核変換を利用して、放射性核種を別な核種に変換することで、高レベル放射性廃棄物中の長寿命核種(長い間放射線を放出し続ける核種)を、短寿命核種(短期間で放射線を放出しなくなる核種)、または安定核種(放射線を放出しない核種)へ変換する技術。

 超ウラン元素のNp(ネプツニウム), Am(アメリシウム), Cm(キュリウム)や、核分裂生成物のTc(テクネチウム)-99等は、放射線放出の半減期(放射線を出す原子数が半分に減少するまでの時間)が数万年間になるが、これを半減期が数百年の短寿命核種、あるいは放射線を出さない安定核種に変換する技術が開発されると、放射性廃棄物の管理期間の短縮や、管理面積の削減などが可能になり、管理が格段に容易かつ安全になると見込まれている。将来的には「加速器駆動型原子力システム(ADS)」も構想されている。 。

  • 加速器 (※加)

 電子や陽子などの電気をもつ粒子を電場で加速し、大きな運動エネルギーを与えるための装置。粒子を走らせる軌道が直線状のもの(線形加速器、リニアック)と円形のもの(サイクロトロン、シンクロトロン等)に大別される。加速器の本来の目的は、高エネルギーの粒子をつくって他の粒子や原子核に衝突させ、素粒子反応や原子核反応を起こさせることにある。近年は医療用や工業用にも用いられる。加速器で得られる粒子のエネルギーは電子ボルト(eV)単位で表される。100万電子ボルトをMeV、10億電子ボルトをGeVと略記する。

  • 加速器駆動未臨界炉 (ADS) (※換)

 核破砕中性子源で作りだした中性子ビームを利用して、核分裂の連鎖反応を未臨界状態で維持するシステムのこと。

 通常の原子炉では、核分裂の連鎖反応から生まれる中性子で臨界状態に保つことにより維持しているのに対し、加速器駆動原子力システムでは未臨界状態を保ち、加速した陽子ビームを重金属ターゲットに衝突させて起きる核破砕反応の中性子を核分裂に用いている。

 このシステムでは未臨界状態での運転のため、加速器を停止して陽子ビームを止めると核破砕反応も止まり、中性子の供給も止まるためそれ以上の核分裂反応は起きない。そのため超臨界となるような事故が起こることはなく、安全性が高いと考えられている。

 将来的には、使用済み燃料から分離した長寿命放射性核種であるネプツニウム、アメリシウム等のマイナーアクチニドの核変換に、このシステムを利用することを検討している。また核変換反応により生まれる熱を利用して発電を行い、その電力を加速器の運転に自給するシステムも検討されている。

 しかし陽子ビーム輸送システム、ビーム窓、核破砕ターゲットなどの技術を開発すること、またこのようなシステムの運転経験が無いことなど、今後の開発課題も多い。

  • 加速空胴 (※加)

 加速器を構成する機器のうち、加速された粒子をさらに加速しつつ、その波形を整えて、目的に適した粒子ビームにするための機器

ドラム缶を横にしたような形状で、内部に空間があるため加速空胴(空洞と言う場合もある)と呼ばれる。

 空胴内部は蛇腹状になっていたり、あるいは適当な間隔で電極が設置されている。加速空洞内に高周波を送り込むと、蛇腹の先端部あるいは電極部に高周波電場(+(プラス)と-(マイナス)が交互に入れ替わる電場)が発生する。陽子はプラスの電荷を帯びているので、マイナスの電場に引きつけられるように加速される。陽子がマイナスの電極を通過すると、その電極はプラスの電場に入れ替わり、今までプラスの電場だった次の電極が今度はマイナスになる(これが高周波電場)。陽子はまた次のプラス電場に引きつけられ、さらに加速されていく。陽子から見ると、マイナスの電場が次々と先へ先へと進んでいくので、それに引きつけられて加速されていく。

 また、陽子はまるで波乗り(サーフィン)のように、高周波の波長の頂点部に集まるようになるので、塊(陽子ビーム)として形が整えられる。

  • 荷電変換膜 (※加)

 負イオンは他の原子・分子等と衝突することにより、容易に電子を損失し陽子イオンとなる。高速の負水素イオン(水素原子に電子がさらに1個付いて、合計2個の電子が原子核である陽子の周囲にある状態)は、薄膜を通過するとき、薄膜を構成している原子や分子と衝突し、2個の電子をはぎ取られ陽子となる。この性質を利用し、入射するイオンの荷電を負から正に変換する膜を荷電変換膜と呼ぶ。

 J-PARCでは、リニアックで加速した負水素イオンを、3GeVシンクロトロンに入射する時に炭素薄膜を通過させて荷電変換を行い、陽子に変換している。

  • 管理型処分 (※換)

 放射性核種の濃度が時間とともに減少し、人間環境への影響が十分に軽減されるまで、放射性核種の濃度に応じた管理を行うことで、放射性廃棄物を人間環境への影響がないように安全に処分する方法。

  

【 き 】

  

  • キッカー電磁石 (※加)

 シンクロトロン等の円形加速器に陽子ビームを別の加速器から入射するとき、ビームが所定の位置に到達した瞬間に、ビームを周回軌道方向に蹴り入れる(キックする)ための電磁石。またシンクロトロンからビームを取り出すとき、必要なビームだけを蹴り出すためにも利用される。

 キッカー電磁石は、瞬間的に強力な磁場を発生できるように工夫された特殊な電磁石である。

  • キュリウム (Cm) (※換)

 原子番号96の超ウラン元素の1種。すべて放射性同位体である。α線を放出する Cm-242(半減期163日)、Cm-244(半減期 18年)がある。

  • 局在化 (※加)

 出来事を限られた場所で起こるようにすること。

 J-PARCでは、加速器で陽子ビームが真空ダクトなどに衝突して失われるビームロスが起きると放射線が発生し、加速器構成機器を放射化させる。放射化した機器はメンテナンスなどの作業時に放射線被曝を起こす恐れがある。そのためビームロスをある一定の場所、例えば予めビームが衝突しても影響が無いような対策を施したコリメーターなどに局在化させることで、他の部分でのビームロスを防ぎ、放射化などの影響を極力低減化させるようにしている。

  • 極低温水素循環システム (※物)

 J-PARCの核破砕中性子源において、およそ-253℃(20K)、15気圧(1.5MPa)の極低温水素(液体水素)を生成し、中性子源中心部に設置したモデレータまで極低温水素を供給するための冷凍システム。

 極低温水素は、核破砕反応によって生成した高エネルギー中性子を冷やす(エネルギーを下げる)ために使用される。

  

【 く 】

  

  • クォーク (※素)

 物質を構成する最も基本的な構成要素の一種。u(アップ)、d(ダウン)、s(ストレンジ)、c(チャーム)、b(ボトム)、t(トップ)の6種類ある。通常単体では存在せず、クォーク複合体(ハドロン)を形成して、陽子や中性子などの核子や、中間子などを構成している。陽子、中性子などの核子はクォーク3つ、中間子はクォークと反クォークの対からできている。

  • 繰り返し周波数 (※加)

 物事が1秒間に起こる回数で単位はヘルツ(Hz)。J-PARCではシンクロトロン加速器の、ビーム入射、加速、ビーム取り出しという一連の操作が1秒間に起こる回数を呼んでいる。

 J-PARCの3GeVシンクロトロンでは一連の操作が1秒間に25回(0.04秒に1回)繰り返されるので、25Hzであり、50GeVシンクロトロンでは3.64秒毎に1回繰り返されるので0.275Hzとなる。

  

【 け 】

  

  • ゲノム (※物)

 生物体の細胞の中に存在する遺伝情報の総体で、この中には遺伝子と遺伝子の発現を制御する情報などが含まれている。タンパク質と遺伝子はいわば製品とその設計図の関係にあり、ゲノム上には設計図のほか、製品の製造を管理・制御している部位が存在している。また、生物の機能維持に何らかの影響を及ぼしていると考えられる領域もかなりの割合で存在している。

 その構成は生物の種に固有であり、人間を人間としている遺伝情報の総体であるヒトゲノムは、約30億塩基のDNA=デオキシリボ核酸からなり、24本の染色体に分配されている。

  • ゲノム科学 (※物)

 ゲノム、遺伝子、タンパク質との三位一体の研究により、高い次元での生命現象の把握を目指す科学の総称をゲノム科学と呼ぶ。これらを明らかにしていくことによって、生命現象のより正確な把握が可能になると考えられている。「全てのゲノムの塩基配列を決定してしまおう」というプロジェクトが、ヒトを含めた様々な生物を対象として実施されている。

  • 原子核(※素)

 原子の中心にあり、陽子と中性子(水素原子核は陽子だけ)から構成されている。約1億分の1cmの大きさの原子に対して、原子核は約1兆分の1cm程度の大きさと言われている。原子核の周囲を電子が雲のように取り囲んでいる。

 電子は質量が極端に小さいため、原子核には原子の質量の大部分が集中している。原子の質量のほとんどは原子核の重さである。陽子は陽電荷(+、プラス)であり、中性子は電荷をもたないため、原子核は陽電気を帯びている。周囲を取り囲む電子は負(-、マイナス)の電荷を帯びて原子核と電気的に釣り合い、原子として中性になっている。

 原子の性質を表す時、陽子の数を原子番号、陽子と中性子の総数を質量数と呼ぶ。例えばウランの原子核には陽子が92個あるので原子番号は92である。ウランのうち原子核に中性子が143個あるものをウラン235(核分裂するウラン)、中性子が147個あるものをウラン238(核分裂しないウラン)と呼ぶ。

  • 減速材 (※物)

モデレータ」の項を参照。

  

【 こ 】

  

  • 高温超伝導 (※物)

 物質の電気抵抗が0(ゼロ)となる現象を超伝導と呼ぶ。抵抗が無いため、一度流した電気がずっと流れ続ける、遠方まで送電しても電力の損失が無い、強力な磁力を発生させることができるなど、今後のエネルギー問題を解決するひとつの手段として注目されている。

 超伝導状態は、材料を液体ヘリウムなどで絶対零度(-273℃)近くまで冷却した極低温で起きる現象であるが、液体窒素(-196℃)、あるいはそれ以上の温度でも超伝導状態になる物質が発見され、これらを高温超伝導物質と呼んでいる。どうして高温超伝導状態が起きるのかを、中性子などを利用して物質の原子配列やそのメカニズムを解析し、明らかにしようとする研究がJ-PARCでも進められている。

 高温と言ってもまだマイナス200℃近い温度であるが、研究が進み、もしこれが例えば室温付近でも起こるような高温超伝導材料が開発されれば、材料を冷却する必要は無くなり、応用範囲などが飛躍的に広がる。リニアモーターカーの実用化や、世界的な電力ネットワーク構築なども期待されている。

  • 高速増殖炉 (FBR) (※換)

 高速中性子による原子核分裂連鎖反応によってエネルギーを発生しながら、原子炉内において消費した核燃料以上に、新しい核燃料(プルトニウム)を生成する原子炉。福井県敦賀市に原型炉「もんじゅ」がある。

  • 高速中性子 (※換)

 大きい運動エネルギーを持つ(スピードが速い)中性子のこと。(参照「熱中性子」)

  • 高レベル(放射性)廃棄物 (※換)

 原子力発電所や再処理工場などから出る放射能の強い放射性廃棄物。一般的には使用済み核燃料を再処理してウランとプルトニウムを回収した残りのもので、高レベル放射性廃液、またはそれをガラス固化したものをいう。

 ストロンチウム-90、セシウム -137などの核分裂生成物と、アメリシウム-241、ネプツニウム-237などのアクチニド(原子番号89番以上の元素で放射性元素)など、強い放射能を持つ核種や長寿命の核種が含まれている。

  • 小林・益川理論 (※素)

 陽子や中性子、中間子などは、6種類のクォークと呼ばれる素粒子が集まって構成されているが、クォークが3種類(アップクォーク、ダウンクォーク、ストレンジクォーク)しか発見されていなかった当時は、CP対称性の破れは説明できなかった。

 それを1973年に、当時それぞれ京都大学理学部助手であった小林誠高エネルギー加速器研究機構栄誉教授と、益川敏英京都産業大学理学部教授が、CP対称性の破れが起きるためにはクォークが3種類では組み合わせの数が不十分であり、6種類のクォークで初めてCP対称性が破れることを示し、未発見のクォークの存在を予言した。その後1974年にチャームクォーク、 1977年にボトムクォーク、1995年にトップクォークが予言どおりに発見された。

 この先駆的な理論と業績により、小林・益川両教授は2008年ノーベル物理学賞を受賞した。