トピックス

2020.10.30

J-PARC News 第186号

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≪Topics 1≫
■J-PARCオンライン施設公開2020・J-PARCライブ配信(10月10日)
 -今年はオンラインでJ-PARCにGO!- 沢山のご視聴ありがとうございました!!

 今年度の施設公開は、コロナ禍のため実施を見送りJ-PARCホームページ上でのオンライン施設公開としました。オンライン公開は、10月7日に始まり、10日にはYouTubeによるライブ配信を実施しました。オープニングは、山田修東海村長と齊藤直人センター長によるトークや、東海村公式キャラクターのイモゾー君らキャストによるクイズが企画されました。続いて、ハドロン実験施設、物質・生命科学実験施設(MLF)、ニュートリノモニター棟から施設紹介の中継があり、研究者のトークと視聴者との質疑応答がありました。オンライン施設公開の特設サイトでは、ライブ配信では紹介できなかった施設やオンラインだからこそ見られる装置を詳しく紹介することができました。施設公開の内容は公式ホームぺージからご視聴できます。
J-PARCオンライン施設公開2020特設サイトはこちら。 http://j-parc.jp/c/OPEN_HOUSE/2020/

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≪Topics 2≫
■沖田英史氏が、第17回日本加速器学会年会のポスター発表で年会賞受賞(9月4日)

 第17回日本加速器学会年会が、愛媛県松山市で9月2日~4日に開催されました。今回は、新型コロナウイルス感染拡大の状況からオンライン開催となりました。その中で、口頭発表とポスター発表部門から優れた発表者5名に年会賞が贈られました。ポスター発表部門では、J-PARCセンター加速器第二セクションの沖田英史氏(JAEA博士研究員)が、「縦方向計算コードBLonDのJ-PARC RCSへの適用に向けたベンチマーク」の発表で年会賞を受賞しました。沖田氏は、RCS(3GeVシンクロトロン)の加速中のビーム進行方向(縦方向)のビーム挙動評価に、CERNが開発を進めている新しい縦方向ビームシミュレーションコードBLonD (Beam Longitudinal Dynamics) が適用可能であることを検証しました。実際の1MW RCSビーム運転のパラメータを反映したBLonDシミュレーションが、ビーム測定値を非常に精度よく再現していることを確認したことが高く評価されたものです。
※欧州原子核研究機構(CERN)は、スイスとフランスの国境地帯にまたがって位置する世界最大規模の素粒子物理学の研究所。

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■J-PARCハローサイエンス「リチウムイオン電池の革新にむけて~J-PARCにおける最新の蓄電池研究~」
 (9月25日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」 )

 9月のハローサイエンスは、 “J-PARCにおける最新の蓄電池研究”をテーマとして中性子利用セクションの神山崇氏が講演しました。神山氏は冒頭で、吉野彰先生が昨年度のノーベル化学賞受賞講演の中で、高度な人工知能を搭載した車やロボットなどが活躍する未来社会を実現するために、蓄電池開発が必要だと述べていることを紹介し、その蓄電池の開発研究では中性子がとても有効な手段であることを示しました。さらに、90年前の中性子の発見から物質研究の幕開けを振り返りつつ、J-PARC物質・生命科学実験施設の実験装置SPICAを用いた最先端の電池研究の現状について、動画を交えながら実験やデータ解析の様子を紹介しました。参加者から多数の質問が寄せられ、テーマに対する関心の高さがうかがえました。

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■第6回J-PARCプレス勉強会開催
 (9月30日、J-PARC研究棟からZoomによるオンライン)

 Withコロナ時代の新しい試みとして、J-PARCプレス勉強会をZoomによるオンライン形式で開催しました。7社9名の参加があり、冒頭、齊藤直人センター長がJ-PARCの現状について説明し、続く研究事例の紹介では、中性子利用セクションの篠原武尚氏(JAEA研究主幹)が「中性子イメージング技術とその応用」について報告しました。篠原氏は、MLFに設置したパルス中性子専用イメージング装置「螺鈿」の装置責任者で、中性子イメージングの特徴、装置、応用例を紹介しました。中性子イメージングによる物質内部の非破壊観察例、動作中のモーターの磁場分布可視化などの実用製品のその場観察例、また、パルス中性子を利用した元素選択型イメージングなどの新たな可視化技術について説明しました。勉強会最後の質疑応答では、J-PARCで計画している素粒子原子核の実験「ミュオンg-2/EDM」と先行する米国フェルミ研究所の実験との関わり、中性子による燃料電池内の水の可視化の意義などが話題となりました。

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■J-PARC科学教室「世界最小のコマで分かる!?ノーベル賞級の大発見~小さな世界を大きな装置で解明する加速器研究~」(10月4日、日立シビックセンター科学館)

 J-PARCセンターによる科学実験教室を日立シビックセンター科学館で開催しました。ミュオン研究に携わる三部勉氏(ハドロンセクション)、下村浩一郎氏(物質・生命科学ディビジョン 副ディビジョン長)、大谷将士氏(加速器第七セクション)の研究者と井上直子氏(広報セクション)の4名が講師を務めました。教室には、「ちょっと変わったコマの工作・実験を通して、J-PARCにおける研究の世界に足を踏み入れてみましょう!」の呼びかけに、科学好きな小学生8名が参加、先生達の話の流れにのって一つ一つ実験をこなしていました。①円形コイルに電流を流して電子の移動により出来る磁力線を方位磁石で確認し、円板磁石の磁力線と比べる実験、②歳差運動を見る実験では、発泡スチロール皿の中央に取付けた回転軸のコマを、コマの重心と回転軸が接する支点の長さを調整して回した時の歳差運動の違いの観察と、紐に乗せた回転する地球ジャイロゴマが落下しないことを実際に体験しました。今回の実験は、電子やミュオンという素粒子を題材にしたもので、終了後のアンケートで高い満足度が示されました。さらに参加した全員がJ-PARCのことをもっと知りたいと答えていました。当日は、日立市のケーブルテレビJWAYの取材がありました。
※コマの回転軸自身がぐるぐる回る動きのこと。

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■ご視察者など

 10月16日 文部科学省研究開発局原子力課長
 10月20日 文部科学大臣政務官

 

 


■加速器運転計画

 11月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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 ■さんぽ道 ③ -ランナーと加速器-

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 原子力科学研究所敷地の十数m地下には、J-PARCの巨大な加速器トンネルがあり、多数の陽子たちが走り回っています。一方地上では、昼休み、大勢のランナーたちが走り回っています。
 ランナーは孤独を味わいながら、あるいは競い合ったり励まし合ったりしながら、広大な敷地を走っています。
 春、路面に積もったヤマザクラの花びらは、ランナーが通り過ぎると、ランナーを追いかけるように軽やかに舞い上がります。夏、330mにも及ぶリニアック棟の長大な日陰を抜け、強烈な日差しを浴びた時、太平洋からの潮風がランナーの頬を優しくなでるように横切ります。長い影を従えたランナーが、道路に垂れ下がったススキの穂をかすめると、足元の秋の虫たちは鳴くのをやめ、ランナーを見送ります。動物たちが活動を休む冬には、ランナーの足音が高く響き、木立を越えて来た波音と青空の下で共鳴します。
 ランナーのひとりである大和田稔さんは、40年以上前からこの地を走っているベテランです。最近、ギリシャのアテネからスパルタまでの246kmを34時間04分21秒で完走したのを始め、1年間に5,000kmを走っています。
 J-PARCの陽子たちは、メンテナンス日を除けば、雨の日も風の日も雪の日も、走り続けます。地上ではランナーたちが、雨の日も風の日も雪の日も、走り続けています。ランナーたちのさわやかな走りは、物言わず、姿も見えない陽子たちの営みを代弁しているようにも感じられます。