トピックス

2020.09.30

J-PARC News 第185号

PDF(571KB)

≪Information≫
■J-PARCオンライン施設公開2020について ~今年はオンラインでJ-PARCにGO!!~

・10月7日(水)12:00~ 特設サイト公開(J-PARCホームページ)
初公開の施設を含む7つの施設の映像やキッズコーナーなど楽しいコンテンツがいっぱい!
・10月10日(土)10:00~15:00 J-PARCからライブ配信
実験施設からの実況中継や研究者のトークを行うほか、東海村の山田村長がイモゾーと
共に出演します。どうぞお見逃しなく!
詳しくはJ-PARCホームページをご覧ください。https://j-parc.jp/c/information/2020/09/14000587.html

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≪Topics≫
■「高耐久性T0チョッパーの開発」に貢献いただいた樫山工業株式会社、株式会社鈴木商館に感謝状(9月11日、J-PARC)

 高い耐久性を持つ新しいT0チョッパーの開発に成功した樫山工業株式会社と株式会社鈴木商館の努力に対して、齊藤直人センター長より感謝状が贈呈されました。感謝状の贈呈に先立って「高耐久性T0チョッパーの開発」の講演が行われました。講演では、中性子利用セクションの中村充孝サブリーダー(BL01・四季の副装置責任者)による開発経緯と要求仕様の紹介に続き、樫山工業株式会社の岩根松美氏が両社を代表して、開発成功までの道のりについて話しました。物質・生命科学実験施設(MLF)では、中性子実験におけるバックグラウンドの大きな要因となるパルス陽子が入射した瞬間に発生するガンマ線や高速中性子を遮断するためにT0チョッパーを使用していますが、振動やベアリング損傷等、耐久性に課題があり、高速回転での安定運転が困難でした。また、中性子ビーム取り出し口に近く放射化による線量の高さから保守サイクルの長期化(高耐久性)も強く望まれていました。開発では、非対称ローター構造での100Hz 安定運転、高速性能を維持しながらの軸剛性アップ、冷却水不要の高効率空冷システムといった様々な技術的課題を克服し、開発着手以来2年という短期間で、研究者の要求仕様に全て応えた高耐久性T0チョッパーを完成させたことが報告され、会場から賛辞の声が上がりました。令和元年12月からBL01ですでに使用を開始しており、両社には、引き続きMLFの研究活動への支援をお願いする次第です。

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■J-PARC 安全の日(9月9日、J-PARC/Zoom 開催)
 労働安全衛生総合研究所 北條理恵子先生の講演 ~「産業安全行動分析学への招待」~

 J-PARCセンターでは、2013年5月に放射性物質漏えい事故が発生したことを安全に関わる重要事項として認識し、毎年5月に「安全の日」を設けてきました。今年度は新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえてリモートライブ形式で9月9日に開催しました。冒頭、齊藤直人センター長が挨拶を行い、続いて、J-PARCセンターの「2019年度良好事例」の表彰を行いました。受賞対象として、セクション安全パトロール、センター長巡視、安全衛生管理者巡視などにより挙げられた多数の良好事例から、最多賞(中性子基盤セクション、加速器第一セクション)、安全配慮賞(中性子基盤セクション)、創意工夫賞(核変換ディビジョン、加速器第二セクション)、衛生配慮賞(J-PARCで働く全ての皆様:新型コロナウイルス感染予防対策)の4賞に計6件が選ばれ、センター長からそれぞれ表彰状が各担当者に手渡されました。
 続いて、労働安全衛生総合研究所の北條理恵子先生による講演「産業安全行動分析学への招待」が行われました。北條先生は、同研究所・機械システム安全研究グループに所属され、心理学の専門領域の一つである行動分析学の考え方を産業現場での安全行動に応用する「産業安全行動分析学」に関わるご研究を進められています。「人間の行動は、無条件反射、条件反射、学習行動の3つに分類され、すべての行動は結果によって維持されている」と切り出され、いろいろな環境・条件下における人間の取る振舞い、行動などについて、事例を挙げながら興味深いお話をいただきました。
 また、2013年5月23日の事故に関わる「記録映像 J-PARC放射性物質漏えい事故 -科学的側面を中心に-」が上映されました。今回の記録映像は、同事故について科学的側面を中心に専門外の人にもより分かり易く伝えることをコンセプトに新たに作成したものです。最後に、石井哲朗安全統括副センター長が閉会挨拶を行い、「安全の日」の行事は終了となりました。

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■J-PARCハローサイエンス 止まったらおしまい〜中性子でたんぱく質の「動き」を探る~開催
(8月21日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」)

 8月のハローサイエンスでは、「中性子が生命科学にどのような貢献をしているか」をテーマに、量子科学技術研究開発機構・量子生命科学領域の藤原悟氏が講演しました。まず、生物の自己増殖とウイルスの感染・増殖のメカニズムについての話があり、続いて、全ての生物が生きるのに必須のたんぱく質は実に様々な働きをしており、たんぱく質がうまく働くにはその動き(ゆらぎ)が重要であることが語られました。そして、そのゆらぎを観察する手法である中性子準弾性散乱測定が紹介されました。さらに、J-PARCには、たんぱく質試料の測定に適したDNA、AMATERASという実験装置があり、中性子を照射して起きる、中性子とゆらぎとの間でのエネルギーのやり取りの情報から、たんぱく質の機能が解明できることが紹介されました。参加者アンケートには、我々の体に関わるたんぱく質をテーマとした講演に満足されたとの回答が多く寄せられました。

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■ご視察者など

 9月 2 日 竹本直一 内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)
 9月 8 日 文部科学省科学技術・学術政策局研究開発基盤課 量子研究推進室長
 9月16日 茨城大学 学長 他

 


■加速器運転計画

 夏季メンテナンス後の加速器運転は、11月からとなります。

 

 

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■「J-PARCさんぽ道」をスタート
さんぽ道 ① -海の色は2色- (J-PARCホームページ、J-PARC NEWS 184号に掲載)

 「J-PARCさんぽ道」をスタートしました。日々広報スタッフが感じていることを不定期に綴っていきます。
J-PARC NEWS 184号ホームページ版はこちら。 http://j-parc.jp/c/topics/2020/09/02000584.html

 

 



 ■さんぽ道 ② -J-PARCの健康診断-

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 J-PARCでは、毎年、わが国の電力需要が最も多い7月から9月の間、運転を休止し、長い夏休みに入ります。
 しかし、J-PARCのスタッフは、その間、休んでいるわけではありません。加速器の陽子ビームの通路などは、運転中は放射線が出ているため、加速器を止める時を狙って内部に入り、さまざまなメンテナンスをするのです。
 写真は、最初の加速器であるリニアックの中で、加速空洞や電磁石の位置を0.01mm単位の精度で測量しているところです。陽子ビームが通る機器は0.1mm以内の位置に整列しないと、陽子ビームが正しい軌道を進まなくなります。
 このような精密測量を毎年する必要があるのは、建物がごくゆっくりですが変形しているためです。変形が確認された場合、補正電磁石で磁場を修正したり、磁石本体の位置を動かしたりして修正します。
 しかしこれだけの調整をしても、加速器の位置が完全に保たれるわけではありません。周期的な変動があります。季節の温度変化で数ヵ月をかけてゆっくり変形しますし、地球自体が月の引力で、毎日歪んでいるからです。ここまでの位置調整はさすがにできませんが、加速器の位置データを見ることだけで、今は満潮だとか干潮だとかが分かります。
 J-PARCの加速器は非常に大がかりな装置である一方で、非常にデリケートな装置でもあるのです。