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みなさん、こんにちは。J-PARCは地震で大きな被害を受けましたが、建物がこわれてしまったり、装置が倒れてしまうような、とんでもない (?) 被害はまぬがれました。そのわけは、建設工事の時にしっかりと対策をしておいたからです。
J-PARCの加速器は地下に作ったトンネル内に、実験装置は大きな建物内に収められていますが、それぞれを作る工事の時に地震の対策をしておいたのです。それは、建物やトンネルを支える太い杭を、深いところにある岩盤という岩や固い土の層まで何本も打ち込んだ基礎工事です。
写真にあるように、ずらりと並んでいる「杭打ち機」という機械を使って、直径が1メートル位もある、太いコンクリートや鉄製の杭を、何本も地面に打ち込みました。深いところは約60メートルも打ち込んだところがあります。
これらのたくさんの杭が、トンネルや建物をガッチリと支えていたので、大きな地震の揺れにも耐えたのです。基礎がしっかりしていたので、大きな被害を防ぐことができました。何事においても「基礎」をしっかりしておくことは、とても大切なことですね! (続く)
みなさん、こんにちは。地震被害からの復旧作業をご報告していますが、今回はJ-PARCの加速器のうちリニアックです。リニアックというのは英語の「Linear Accelerator」 (リニア・アクセラレータ) を略したことばで、日本語では直線加速器と呼ばれています。リニアモーターという言葉を知っていますね?そのリニア (直線) と同じ意味です。
リニアックは、地下およそ15mに作ったトンネルに、約330m、ま〜っすぐに装置が並べられています。どんなにまっすぐかというと!?330m先で許される誤差は、わずか1ミリメートル以下です。これには地球の丸みも影響します。地面と平行に正確に装置を並べたつもりでも、実は300mくらい先に行くと3ミリメートルくらい下がってしまうのです。
ですから、J-PARCのリニアックは、丸い地球の1点に接している仮想の平面を考えて、その平面に合わせて装置が並べられています。レーザー光線などを使って、正確に並べる技術が必要です。超精密機械ですね。 しかし今回の大きな地震では、装置が倒れるような被害こそありませんでしたが、よく調べたところ、トンネルが途中でVの字に折れていたのです!折れていたといっても、高さの差は、300メートルのトンネルで約4センチくらいでしたが・・・。装置も同じように、正確に並べていた場所からVの字にずれてしまいました。これだけのずれでも、装置を運転することはできません。
これを元通りに直す作業は、とても大変で、とても時間がかかることが分かりました。しかし、J-PARCは1日も早く復旧して、運転を再開しなければなりません。そこで一つの決断をしました。「Vの字だって、いいじゃないか!」
実は、リニアックなどの加速器で加速されている陽子ビームは、磁石の力で進行方向を曲げることができるのです。測量したデーターをコンピューターで計算した結果、リニアックの途中に置かれている電磁石をうまく使えば、少しVの字になっていても、陽子ビームをきちんと、安全に加速できることが分かりました。
現在リニアックは、途中で高さにして約2.5センチメートルの差で、Vの字で並べられています。12月に行った試験運転では、途中の電磁石がきちんと働き、地震前とほぼ同じ性能で運転できることが確認されました。このような復旧作業を行って、J-PARCは早く運転を再開することができたのです。
でもリニアックの性能をもっと高めるために、本当は元通り1ミリメートル以下の誤差で並べ直したいです。その作業は、J-PARCの運転を長く停止している夏の期間に行うことにしています。 (続く)
みなさん、こんにちは。今回は、J-PARCの建物の復旧作業についてお話しします。 J-PARCの建物や地下トンネルは大切な装置などを並べているので、とてもじょうぶに作られています。建物やトンネルの下には、太い杭が何本も岩盤まで打ち込まれ、ガッチリと支えています。そのため今回の大きな地震でも、装置が倒れるなどの被害を防ぐことができました。建物なども大きく沈んでしまうようなことはありませんでした。
しかし、大きな建物の横に増設した小さな建物などは被害を受けてしまいました。このような建物は厚さ数メートルの基礎コンクリートが建物を支えていましたが、岩盤まで杭は打ち込まれていませんでした。この基礎コンクリートごと、建物が15センチメートルくらい沈んでしまったのです。
J-PARCでは、この沈んだ建物を、建物ごと持ち上げる方法で復旧することにしました。建物の重さは、約4,000トンもあります!どうやって持ち上げるのでしょうか?
これには「油圧ジャッキ」という装置を使いました。皆さんは自動車修理工場などで、クルマを修理したり点検したりするために、高い所に持ち上げているのを見たことがありませんか?あの重いクルマを持ち上げることができる装置が油圧ジャッキです。 J-PARCで使った油圧ジャッキは、直径が約30pの丸いものです。見た目は小さいのですが、この油圧ジャッキ1台で持ち上げられる重さは、何と200トン!この油圧ジャッキを24台使って、4千トンの建物を、1日に数センチメートル、少しずつ慎重に持ち上げました。
油圧ジャッキで持ち上げた建物の床には小さな穴を開け、コンクリートを流し込みます。コンクリートが固まったら、また少し上げる・・・。これを繰り返して、およそ1ヶ月で元通りの高さにまで直すことができました。
このようにJ-PARCは、いろいろな技術を使いながら復旧作業を進めてきたのです。 (続く)
みなさん、こんにちは。J-PARCは地震の被害からの復旧作業を行いましたが、いくつかその様子をご報告します。
J-PARCには加速器という装置がありますが、加速器は地下およそ15mに作ったトンネルに主な装置が並べられています。1台が数トンから数十トンもあるような、巨大な電磁石などが整然と並べられています。
しかし、ただ並べているだけではありません。とても精密に並べられているのです。例えば50GeVシンクロトロンでは、1周およそ1600mの地下トンネル内に、およそ400台の電磁石が、1ミリメートル以下の誤差精度で並べられているのです。
このような精度で装置を並べるためには、とても高度な技術が必要です。地球の丸みさえ影響するので、きちんと計算して補正する必要もあります。J-PARCは最高の技術を使って作られた超精密機械なのです。
今回の大きな地震でも、加速器を並べている地下トンネルは強固に作られているので、電磁石が倒れるような被害はありませんでした。しかし電磁石などは数ミリから数センチメートル、正確に並べていた場所からずれてしまいました。 どうぞこれからも、J-PARCに対する皆さんのご支援を、よろしくお願いいたしします。
このままでは、安全に装置を運転することはできません。全ての電磁石の位置を、レーザー光線を利用した最新の計測装置を使って、どのくらいずれたのか測量しました。測量したデーターをコンピューターで計算した結果、元通りにするためには、全ての電磁石の位置を直さなければいけないことが分かりました。
これはとても大変な作業ですが、1台1台、電磁石の位置を0.1ミリ単位で調整しました。これも大変な作業ですが、みんなで頑張って進めました。およそ3ヶ月間かけて作業を行い、元通り1ミリメートル以下の誤差で並べ直すことができました。
他の加速器も同じように測量や調整を行いました。試験運転を行った結果では、地震前と同じ性能で運転できることが確認されています。このような復旧作業を続けることで、J-PARCは運転を再開することができるようになったのです。 (続く)
みなさん、あけましておめでとうございます。昨年3月11日の東日本大震災でJ-PARCは大きな被害を受けましたが、全力で復旧作業に取り組んできました。その結果、昨年末から試験を開始することができるようになりました。
去年の12月9日、およそ9ヶ月ぶりに、運転を許可するためのキー (かぎ) が、永宮J-PARCセンター長によってONにされました。運転を停止していたJ-PARCの試験が開始されたのです。
試験は順調に進み、ほぼ地震前と同じように装置が運転できることが確認できました。とても困難な作業をこつこつと進め、復旧に一生懸命取り組んできた関係者の努力が実ったのです。みんなで記念の写真をとりました。
1月からは、またもとのように、国内や海外からたくさんの研究者の方に来ていただいて実験を始める予定です。
でもこれは、ゴールではありません。J-PARCにとっては、またスタートラインにやっと戻れたということです。復旧に向けてがんばってきた皆さんの努力に報いるためにも、今年こそ!世界があっと驚くような、すばらしい研究成果を生み出していこうと思います。 どうぞこれからも、J-PARCに対する皆さんのご支援を、よろしくお願いいたしします。
そして、しばらくお休みさせていただいた、このP君日記も再開したいと思います。こちらもよろしくお願いします。