■ J-PARC News 第138号より       (2016/10) 
●J-PARC利用実験成果で各賞受賞
  ○ハドロン実験施設での研究成果
  日本原子力研究開発機構 (JAEA) の市川裕大博士研究員は、今回、原子核物理研究の実験コミュニティである原子核談話会から、「J-PARCにおけるd (π+, K+) 反応を用いたストレンジダイバリオンの研究」で第22回原子核談話会新人賞を受賞しました。この研究は、2012年にJ-PARCのハドロン実験施設において行った実験の成果で、π中間子ビームを重陽子に照射し、原子核物理の長年の課題の一つである反K中間子と陽子二つの束縛状態の生成を試みたものです。これは、反K中間子が原子核の構成要素に加わるK中間子原子核と呼ばれる状態を調べるものです。実験の結果、K中間子原子核状態の存在を示唆する結果が得られ、その状態の束縛エネルギーは通常の原子核において陽子や中性子が持つ結合エネルギーに対して約10倍の結合エネルギーとなっていることが分かりました。
   
  ○物質・生命科学実験施設 (MLF) の中性子実験装置による研究成果
  日本中性子科学会会長は、学会の発行誌「波紋」に掲載されたサイエンス記事、特集記事などあらゆる記事の中から、2年毎にプレジデントチョイスを決定します。今回は、2014年11月号から2016年8月号までの記事から、MLFの中性子実験装置BL03「iBIX」、BL08「SuperHRPD」、BL11「PLANET」、BL21「NOVA」による実験成果の論文等4件がプレジデントチョイスに選ばれました。関係者は、今年12月に開催の日本中性子科学会年会で表彰されます。以下に掲載記事などと、関連実験装置を示します。
   


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●計測システム研究会2016 (10月13-14日、高エネルギー加速器研究機構東海キャンパス) 
〜大強度・高輝度ビーム利用実験での計測システム開発現状と今後の展開〜
  本研究会は、様々な分野で活躍する装置開発者が一堂に会し、装置開発の現状と今後の展開について情報交換と議論を行い、連携活動のきっかけになることを目的として開催されています。今回は一昨年に続く2回目の開催で、素粒子原子核実験、物性実験、加速器制御など大強度・高輝度ビーム利用を目的とした装置開発に興味を持つ多くの開発者など84名が参加しました。31件の発表が行われ、閉会の挨拶では相互に活用できるものがあれば協力し高め合うことが重要とのまとめがありました。
   

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●第3回RaDIATE国際協力会議 (9月7-9日、米国PNNL) 
  現在、世界の11機関で国際協力が進行中のRaDIATE (RadiationDamage In Accelerator Target Environments) の運営会合が9月上旬の3日間、米国PNNL (パシフィックノースウエスト国立研究所) で、約30名が参加して開催されました。会議では、一部TV会議システムによるプレゼンも行われました。この国際協力は、加速器からのビーム標的環境における照射損傷の研究協力を行うもので、今年度中にJ-PARCとCERN (欧州原子核研究機構) が加わる手続きが進められています。今回、本会合へJ-PARCからニュートリノ施設のビーム窓材と標的材や、MLF中性子源のターゲット容器材の材料損傷などを評価している担当者2名が参加しました。こちらの照射試験計画とその準備、及び照射後試験計画等について欧米の各研究機関の専門家と協議・調整し、多くの貴重な情報が得られました。次回の会議は、J-PARCで開催の予定となっています。詳細は、http://radiate.fnal.gov/index.htmlをご覧ください。
   

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●2016年度工学材料回折装置「匠」ユーザーミーティング (10月20日、東京・品川) 
  MLFの中性子回折実験装置であるBL19「匠」の関係者は、装置の高度化を検討する目的で利用経験者を対象にユーザーミーティングを開きました。会議冒頭、物質生命科学ディビジョン・共通技術開発セクションリーダーで「匠」の装置責任者である相澤一也氏から、会議開催の趣旨説明や「匠」の経緯・現状などが紹介されました。25名の参加者で、これまでの利用実験の成果などについて13件の発表が行われ、利用実験から使い勝手の向上、今後、整備すべき試料周辺環境装置などについて議論するとともに、各ユーザーの興味ある成果の情報共有などが行われました。
  「匠」は、平成20年10月に4kWの陽子ビームで生成された中性子ビームを初めて受入れ、平成21年1月に20kWでユーザー実験が開始されました。それ以降、鉄鋼材料の残留応力測定、その場変形評価等の利用を始めとして、複合材料である超電導導体の残留応力測定等、幅広く大学、国立研究所、産業界の利用者に活用されています。
   

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●スウェーデン代表団がJ-PARCを訪問 (10月4日、J-PARC研究棟) 
  スウェーデン王国ルンド大学をはじめとするMIRAIプロジェクトの代表団12名が10月4日、J-PARCを訪問しました。「MIRAIプロジェクト」とは、スウェーデンと日本の17の大学によるコンソーシアムで、両国の研究協力の振興、若手研究者の育成・交流を目的としています。現在、同国には2019年度の稼働を目指して欧州核破砕中性子源 (ESS : European Spallation Source) が建設中で、この大型研究施設などを中核とした学術研究地区が形成されつつあります。会合では、J-PARC施設の紹介や、MIRAIプロジェクトの紹介が行われ、J-PARCとスウェーデンの関係機関との間の研究協力の可能性について意見交換が行われました。会合終了後、一行は、J-PARCの実験施設を訪れ、MLFでは、中性子、ミュオンの実験に用いる装置を見学しました。
  代表団は、翌日の10月5日にはKEKを訪問しました。詳細は、KEKホームページをご覧ください。http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Release/20161017142000/
   

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●施設の状況
  1. 加速器運転計画
  11月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。
   

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  2. 実験施設関連 (夏期メンテナンス) 
   (1) 3GeVシンクロトロン (RCS) では、ビームコリメータ最終段の交換作業を実施しました。
   (2) 物質・生命科学実験施設 (MLF) では、BL23ビームラインに中性子ガイド管を設置しました。
   (3) 50GeVシンクロトロン (MR) では、加速空洞を高電圧勾配の空胴へ交換しました。
   

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●大神宮・村松山虚空蔵堂 大空マルシェ (10月8日、東海村) 
  大空マルシェは、東海村の文化と歴史の魅力を次世代に伝えることを目的として、東海村観光協会の主催で毎年行われています。J-PARCでは一昨年から出展しており、今年も低温の世界や磁力を使った実験などが体験できる科学実験コーナーを開きました。マイナス196℃の液体窒素で冷やした超伝導体の磁石がレール上を滑走する「超伝導コースター」実験では、順番を待つ列ができ、子どもから大人まで楽しんでいただけました。
   

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●KEKサイエンス・カフェ「ナミナミならぬ波のパワー」 (10月7、14、21、28日、BiViつくば) 
  高エネルギー加速器研究機構 (KEK) は、毎週金曜日の夜7時から、BiViつくばのつくば総合インフォメーションセンター (交流サロン) で、サイエンス・カフェを開催しています。10月は、J-PARC広報セクションの坂元眞一広報アドバイザーが招かれ、4週にわたり波をキーワードにお話ししました。どんな波にも起こる回折や干渉という現象を、ストローウェーブマシンや水の波で再現し、そこを起点に、ニュートリノ振動や重力波などの最先端科学に潜む“波”を解き明かしていきました。毎回のように参加する学生や年配の方も多く、回数が進むにつれて質問攻めにあうことも度々でした。参加者は楽しみながら最先端研究のことが分かる良い機会となりました。
   

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●第2回和紙ちぎり絵体験教室( (9月30日、KEK東海ドミトリー) 
  東海村で開催のT2K (Tokai to Kamioka) 実験コラボレーションミーティングには、毎回海外からも多数の研究者が出席しています。J-PARCでは、9月末の会議に合わせて、和紙ちぎり絵体験教室を開催しました。教室には海外からの研究者ら15名が参加し、スタッフからちぎり絵作りの説明を聞いたあと、各自が生き物や植物などのモチーフを選んでちぎり絵を体験しました。参加者は、見本を見ながら集中して作品作りに取り組み、1時間ほどで完成させていました。今回準備した絵柄は、柿、葡萄、サクランボ、椿、紅葉、金魚で、椿や紅葉を選ぶ参加者が多く、ちぎり絵が気に入り2つの作品を作り上げた方もいました。
   

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●ご視察者など
    9月 30日  トヨタ自動車株式会社 加藤光久副社長
    10月 4日  スウェーデンMIRAI (未来) プロジェクト関係者
   
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