■ J-PARC News 第93号より       (2012/12) 
●MLF School 2012を開催 (12月18〜21日) 
  J-PARC/MLFでは、世界トップクラスのパルス中性子/ミュオン実験装置を利用した最先端の物質科学や生命科学の実験が進められている。今回、次世代研究者の育成、サイエンスの質向上を目指して、中性子/ミュオンを利用した実験に興味を持ちながら未経験な大学院生、若手研究者を対象とした、第1回MLFスクールを開催した。参加者募集には、定員を大きく上回る申し込みがあり、選考の結果、24名が受講生として参加した。
  初日は、午後から入校式、続いて一般及び放射線取扱等に係る安全教育を実施。2日目は、午前中にMLF施設の概要説明、JRR-3中性子源、ミュオン物性科学、中性子科学などの講義がそれぞれ行われた。2日目午後と3日目には、7つの演習課題 (中性子による非弾性散乱、反射率、粉末回折、小角散乱、単結晶回折、工学回折実験、及びミュオン実験) に分かれ、ビーム利用実習が実施された。最初に各実習担当者から、それぞれの装置の説明、測定原理の説明、実習課題について講義が行われ、その後実習に入った。最終日の午前中には、各班からの実習報告が行われ、その後、スクール終了式、解散となった。参加者からは、とても貴重な実習経験をされた様子が伺えた。本校は、J-PARC、CROSS東海、茨城県が共同主催、KEK物質構造科学研究所などの共催、東京大学物性研究所など後援のもとに開催された。

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●Proton Intensity Frontier の将来を考える - 加速器編 -  (12月20日) 
  J-PARCでは、平成25年後半にリニアックのエネルギー増強や3GeVシンクロトロンの機器の整備を行い、その後50GeVシンクロトロン機器の整備を進め、ビーム強度の目標値達成は平成29年としている。しかし、研究者などからは、将来的に更なる高強度な陽子ビームの達成が望まれている。今回、それらニーズを踏まえたうえでJ-PARC加速器の現状や将来の可能性の検討状況、それに向けた各現場での要素技術開発の現状や展望などが負水素イオン源、50GeVシンクロトロンの加速器空洞や電磁石電源の各担当者から報告された。また、ユーザーの立場から、ニュートリノ物理、ハドロン物理、ミュオン物理、ストレンジ核物理、K稀崩壊の物理、静止K中間子を用いた物理などの分野で、研究の展望が紹介され、それを実現する加速器施設の将来像などについて熱く議論が交わされた。

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●ハドロン実験施設でビーム利用運転再開 (12月14日) 
  ハドロン実験施設では標的の交換、各ビームラインの装置調整、KLビームラインの検出器組立作業などが鋭意進められ、14日からビーム利用実験が再開された。陽子ビーム強度は、11kWに引き上げられ、ビームの質も向上し、K1.8ビームラインで進む中性子過多のハイパー核生成を狙うE10実験ではデータ収集を実施している。

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●加速器運転計画
  1月の運転計画は、下記の通りです。尚、運転計画は、機器の調整状況により変更が生じる場合がある。詳細は、J-PARCホームページの「J-PARCの運転計画」
http://j-parc.jp/ja/Operation/Operation-j12_0903_Shalf.htmlでご確認願います。


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●実験施設関連
  リニアックでは、平成25年3月末を目標に、25台の後段部加速器 (ACS) の製作が進められており、12月6日に21台目が納入された。物質・生命科学実験施設では、水銀ターゲット容器が完成し21日に納入された。4台目となる今回の水銀ターゲット容器は、フランジ部とターゲット容器部が分割型となっている。ハドロン実験施設では、KLビームラインでのKOTO実験に使用する大型真空容器へ各種検出器の組込みなどが完了し、14日からのビーム利用運転で、調整・実験などが進められている。また、ニュートリノ実験施設で行われているT2K実験では、10日からビーム強度210kW運転が実施され、11日には一日当たりのビーム入射陽子数がこれまでの最高を記録した。

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●永宮正治 前J-PARCセンター長が第1回「東海村村民栄誉賞」を受賞
  永宮正治 前J-PARCセンター長と、寺門龍一茨城大学名誉教授が、東海村で初となる「村民栄誉賞」を、また、吉村真晴氏が「文化・スポーツ特別賞」を夫々受賞された。12月6日、表彰式が東海村役場で行われ、村上達也東海村長から表彰状及び記念品が授与された。永宮正治前センター長の受賞は、東海村で稼動中の大強度陽子加速器施設J-PARCの建設にあたり、幾多の困難を乗り越えてそのプロジェクトを完遂し、初代J-PARCセンター長として世界屈指となる最先端科学研究拠点の確立に尽力されたこと、J-PARCは二十一世紀における科学・技術の進歩に貢献するだけではなく、東海村の将来に夢と希望をもたらす礎となると評価され、その功績を顕彰し後世に永く伝えるために村民栄誉賞が贈られたものである。

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●日本中性子科学会 第12回年会
  12月10-11日、日本中性子科学会 第12回年会が、京都大学吉田キャンパス 百周年時計台記念館で開催され、約250名の参加者があった。
  初日は、日本中性子科学会会長で第12回年会実行委員長の金谷利治氏による主催者の開会挨拶に始まり、冒頭では文科省の原克彦 量子放射線研究推進室長、放射光学会の水木純一郎会長、産業界の須藤亮 中性子産業利用推進協議会運営委員長 ( (株) 東芝執行役専務) による来賓挨拶が行われた。続いて、平成24年度学会賞「特別賞」の受賞講演と依頼講演2件が行われた。午後は、学会各賞の授賞式、受賞講演などが行われた。「学会賞」は加倉井和久J-PARCセンターアドバイザー (JAEA量子ビーム研究部門長) が受賞された。他の各賞受賞者については下記参照下さい。
  2日目は、産業利用、若手研究者の講演、一般講演の口頭発表が24件。その内11件がJ-PARC/MLFによる研究成果に係るものだった。ポスターセッションは、初日と二日目に入れ換えを行い、全体で127件あった。
  近年、中性子利用実験による「新たな機能性物質や高性能素材開発」などの産業利用に期待が集まっていることから、今回、年会附帯事業として、より多くの産業界の方に中性子の利用を知ってもらえるように「中性子産業利用相談デスク」の開設、および「中性子産業利用セミナー」なども併せて開催した。また、9日午後には、市民公開講座「中性子ビームがものづくりと医療を変える!」も行われ、一般市民への中性子利用の啓蒙が図られていた。

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●第10回日本中性子科学会各賞受賞者
 【功績賞】 
  鈴木 謙爾氏 ( (財) 特殊無機材料研究所、東北大学名誉教授) 
  受賞テーマ
  「中性子を用いたランダム系物質の構造学的研究」
 【学会賞】 
  加倉井 和久氏 (J−PARCセンターアドバイザー/JAEA量子ビーム応用研究部門) 
  受賞テーマ
  「中性子散乱を用いた低次元および量子スピン磁性体の研究と偏極中性子利用」
 【技術賞】 
  星川 晃範氏 (准教授) ・石垣 徹氏 (教授)  (茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター) 、
  米村 雅雄氏 (J-PARC中性子利用セクション/KEK) 
  受賞テーマ
  「「iMATERIA」における試料自動交換ロボットの開発」…参考:BL20

  安 芳次氏 (J-PARC/KEK (主任技師) 素粒子原子核ディビジョン) 、
  仲吉 一男氏 (J-PARC/KEK素粒子原子核ディビジョン)   千代 浩司氏 (KEK・技師) 
  受賞テーマ
  「DAQミドルウエアの開発と中性子実験への導入」…参考:MLFでの中性子イベントデータ収集関連
 【奨励賞】 
  貞包 浩一朗氏 (KEK) 
  受賞テーマ
  「中性子散乱による水/有機溶媒/塩混合溶液系の新秩序構造の解明」

  小野寺 陽平氏 (京都大学産官学連携研究本部) 
  受賞テーマ
  「中性子散乱による超イオン伝導体の構造に関する研究」…参考:BL21「NOVA」利用
 【特別賞】 
  秋光 純氏 (青山学院大学理工学部教授) 
  受賞テーマ
  「超伝導物質探索、偏極中性子回折法を用いた磁性体の研究と中性子科学への貢献」

  <J-PARCに係る個人の受賞者、及びJ-PARC/MLFの中性子実験などに係る成果での受賞者>

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●ご視察等
     12月  4日  プラズマ計測に関する日豪ワークショップ参加者
     12月  7日  衆議院事務局委員部
     12月 18日  韓国原子力研究所主任研究員
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