■ J-PARC News 第159号より       (2018/07) 
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●MLFで1MW安定運転に成功! (7月3日) 
  J-PARCセンターでは、7月3日にMLFにおいて1MW相当となるビーム出力の連続運転に成功しました。MLFでは4月19日からビーム出力を500kWに上げて運転していましたが、稼働率が93%と非常に安定した運転を6月30日早朝まで継続することができました。引き続き、夏季メンテナンス前に運転出力を増大させる試験運転を実施し、時間平均で約935kWを超えるビームで連続運転に成功しました。これは、中性子生成水銀標的及びミュオン生成回転標的で受けるビーム出力換算で、設計値である1MWのパルスビーム出力に相当します。水銀標的については、夏季メンテナンス中にこれまでのビームにより標的容器が受けた影響を評価し、その結果を基に標的容器の改良を行う予定です。その後、さらに運転経験を蓄積しつつMLFにおける1MWでの利用運転を目指します。

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●磁気渦の生成・消滅過程を100分の1秒単位で測定
- J-PARCでパルス中性子を用いたストロボ撮影に成功 - (7月19日、プレス発表) 
  理化学研究所の中島多朗研究員、中性子利用セクションの稲村泰弘副主任研究員らの共同研究グループは、マンガンとケイ素からなる化合物MnSiの中で現れる微小な磁気渦 (磁気スキルミオン) に対して、急激な温度上昇・下降により変化する過程を、MLFのパルス中性子ビームを用いて、100分の1秒単位の高い時間分解能で"ストロボ写真"のように観測することができました。 温度の上昇によって磁気スキルミオンが消滅する様子や、急速な冷却過程で生成された磁気スキルミオンが本来存在できない低温まで「過冷却」状態で残る様子などの観測に初めて成功しました。本研究は、国際科学雑誌『Physical Review B』の掲載に先立ち、オンライン版 (7月23日付け:日本時間7月24日) に掲載されました。
※ BL15 中性子小角・広角散乱装置「大観」
詳細はJ-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2018/press180724.html

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●3GeV陽子に対する銅の弾き出し断面積の測定に成功 (J-PARC,核変換ディビジョン) 
  加速器駆動型の核変換システム (ADS) に用いられるビーム窓の損傷評価を高精度化するため、3GeV陽子入射に対する銅の弾き出し断面積 (DPA) の測定に成功しました。弾き出し断面積は、極低温状態での抵抗率変化に求めます。3GeVシンクロトロン (RCS) のビーム取り出し部直下に冷凍機を用いた測定装置を設置して実験を行いました。測定値はこれまで標準とされてきた計算モデル (NRTモデル) の値と比べて1/3と小さく、最新の計算モデル (Nordlundモデル) は実験と良い一致を示すことが明らかになりました。※加速器施設におけるビーム窓及び標的の損傷を定める指標として、原子あたりの弾き出し数 (Displacenent per atom: DPA) は一般的に用いられるものの、この基準となる弾き出し断面積の測定データは殆ど無い状態です。

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●J-PARC Neutrino beamline upgrade Technical Advisory Meeting (6月21-22日、J-PARC) 
  ニュートリノ実験施設では加速器 (Main ring) からの陽子ビームの強度を1.3MWまで増強する計画を進めています。6月21、22日の両日、J-PARCの田中万博氏を委員長として、CERN (欧州原子核研究機構) からMarco.Calviani氏、米国フェルミ国立加速器研究所からJames Hylen氏、理科学研究所から福西暢尚氏、さらに国内の専門家数名を招いて、増強計画についての技術諮問委員会を開催しました。ニュートリノセクションの各担当者から、実験施設や増強計画についての具体的な技術検討状況が報告され、その内容に関する活発な質疑応答が行われ、委員会からは今後の対応に関する有意義なコメントが提示されました。

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●J-PARC第21回「生体物質と水和水のダイナミクス及び中性子散乱」 (7月2日、IQBRC) 
  中性子散乱はタンパク質等生体物質の溶液中のダイナミクス (挙動) に関して重要な情報を与えます。今回、CROSSとの共催で、この分野での研究で世界の第一人者である米国テネシー大学のAlexei Sokolov博士、豊田理研の平田文男博士を招待してワークショップを開催しました。Sokolov博士は、中性子によるタンパク質動力学転移に関する研究分野を長年牽引され、平田博士はこの分野で水和水を含めて取り扱う理論を提唱されています。WSでは、生体物質やソフトマターと水和水ダイナミクス研究の最先端をテーマに議論が行われ、情報共有と新たなユーザー開拓のための方策が検討されました。

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●平成30年度「 J-PARC請負業者等安全衛生連絡会」 (6/29、J-PARC) 
  J-PARCの施設運転や、施設及び装置のメンテンナンス作業は、多数の請負業者の方々によって行われています。これら業者の方々と職員が安全意識を共有し、安全確保の徹底を目的として、毎年安全衛生連絡会を開催しています。今年度は、68社70名、J-PARC関係者15名の参加があり、J-PARCの安全統括・石井哲朗副センター長が、J-PARCの近況や安全対策の良好事例、この1年間の原子力機構での事故とその原因などを紹介し、7月から開始される夏季メンテナンス作業に向けて、参加者の安全意識の高揚を図りました。

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●GSA (ジオ・スペース・アドベンチャー) 2018にJ-PARC出展 (7月14-15日、岐阜県飛騨市神岡町) 
  毎年夏に神岡町で開催されるGSAは、神岡鉱山の本物の坑道やスーパーカミオカンデ (SK) などの宇宙物理学最先端の研究施設を利用して行われる地底探検イベントです。飛騨市民をはじめボランティアスタッフによる「GSA実行委員会」が運営する同イベントに、昨年から出展者として協力しています。今年は7月14、15日に、神岡町公民館にて、核破砕反応が目で見てイメージできるガウス加速器の実験や、パネル展示によるJ-PARCの施設概要とT2K実験をはじめJ-PARCで取り組んでいる実験の説明を行いました。期間中、多くの来場者が実験に関心を持った様子でした。

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●SUMI-E INK-PAINTING (7月20日、原科研) 
 
  海外からの研究者などとの交流を深めることを目的に、原子力科学研究所が催す各種イベントの一つとして、7月は墨絵体験教室を開催しました。講師から墨絵の基本的な筆使いなどの説明を聞いた後、J-PARCで研究に従事している海外からのスタッフの皆さんもサンプルを見ながら、各自思い思いの絵を描いて日本文化を感じる墨絵を楽しみました。

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●J-PARCハローサイエンス、ハイブリッド原子炉で原子力発電のゴミを減らす
- 加速器で駆動する原子炉「加速器駆動システム」-  (6/29、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」) 
  6月のサイエンスカフェは、加速器を用いて原子力発電におけるゴミの有害度を低減する「核変換技術」について、核変換ディビジョン・ターゲット技術開発セクションの佐々敏信リーダーが講演しました。核変換技術は、普段の生活で発生するゴミを分別し、それぞれに最適な処理を行う考え方を原子力分野に適用して、核廃棄物の負荷を低減することを目的とします。 原子力発電のゴミから有害な物質を取り出して安全な物質に変換し、ゴミの処分をより簡単にして、加速器と原子炉を組み合わせ、効率よく安全に核変換する新しい原子炉「加速器駆動システム」をJ-PARCで研究していることを紹介しました。

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●ご視察者など
 
    7月 18日  J-PARC PAC (大強度陽子加速器における原子核素粒子共同利用実験審査委員会) 委員、
DOE (米国エネルギー省) Alan Stone氏
    7月 20日  元 (株) 日立製作所代表執行役副社長 小豆畑茂氏
   

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