●中性子実験の計測ノイズを劇的に低減する遮蔽材料の開発に成功 |
JーPARCセンターは(株)フジタと共同で、中性子実験における計測ノイズを劇的に低減する高濃度ボロンモルタルの開発に成功した。JーPARCでは、普通コンクリートと一体化した中性子遮蔽体として物資・生命科学実験施設の冷中性子ディスクチョッパー型分
光器(BL14)に採用された(プレス発表)。中性子実験では、試料から散乱した中性子のみを正確に検出する必要があるが、周辺機器や遮蔽体などで反射・散乱された中性子が計測データにノイズとして混入する問題があり、高精度観測の障害になっていた。今回開発した高濃度ボロンを含有した遮蔽材は、通常の遮蔽体として用いる普通コンクリー
トに比べて、ノイズとなる中性子を低減させる効果が約10倍程度向上することが、研究用原子炉JRR-3の中性子実験装置で確認されており、JーPARCでもその効果が期待されている。(詳細は、http://www.kek.jp/ja/news/press/2009/J-PARC_BL14_Boron.htmlをご覧ください)。
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●中性子全散乱装置NOVAの完成 |
NOVAは、NEDO((独)新エネルギー産業技術総合開発機構)の水素貯蔵材料先端基盤研究事業により、高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構や京都大学等が共同でJーPARC物質・生命科学実験施設(MLF)に建設を進めてきた実験装置である。 全方向に散乱する中性子を捕らえるために、数多くの中性子検出器が配置されているのが特徴で、例えば実用化を目指す燃料電池自動車のた
めの、水素燃料タンクとなるような高性能水素貯蔵材料の開発研究などを行うことができる。低炭素化社会など環境問題の解決に役立つ、水素を利用エネルギーに関する基礎研究の進展に大きく貢献すると期待されている。 装置完成に伴い、6月2日、茨城県東海村の「いばらき量子ビーム研究センター」にてNOVAの完成披露式典が執り行われた。式典には、装置関係者と実験利用者など約70名が出席した。下村理KEK物質構造科学研究所長、永宮正治JーPARCセンター長などの挨拶、経
済産業省資源エネルギー庁新エネルギー対策課燃料電池推進室の川原誠室長(代理;安芸裕久課長補佐)からは来賓を代表して祝辞を頂いた。池田裕二郎JーPARC副センター長からJーPARC及び物質・生命科学実験施設の概要と現状の説明を行い、その後NOVAの見学が行われた。現場では装置責任者であるKEKの大友季哉教授が装置についての詳しい説明を行った。 式典や見学会の模様は報道関係者にも公開され、TV放映や新聞へ記事が掲載された。
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●特集:JーPARCの実験装置について |
< AMATERASー冷中性子ディスクチョッパー型分光器 >物質・生命科学実験施設BL14
ディスクチョッパーとは、わずかな隙間を開けたディスク状の遮蔽体を高速で回転させ、そこを通り抜ける特定のエネルギーの中性子を切り出す(チョッピング)装置。精度よく中性子のエネルギーを選別することができれば、精密な観測が可能になる。 BL14・AMATERASでは、そのような高精度を実現する新開
発の高速ディスクチョッパーや、原子力機構内で製作された高性能スパーミラー導管、ダブルチョッパーの採用などにより、高分解能で大強度の中性子非弾性散乱測定ができる。これにより固体内部の格子振動、磁気励起の測定、液体、高分子、電池材料等内部の原子、分子の移動、振動等のダイナミクスの測定において従来不可能だった微小シグナルの
精密観測が可能となる。 (詳細は、http://j-parc.jp/MatLife/ja/instrumentation/bl14/bl14.htmlをご覧ください)。
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●加速器運転計画 |
平成21年6月末から9月末までは夏期メンテナンスのためJーPARCの運転は停止。運転再開は10月の予定。
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●実験施設関連 |
(1)ハドロン実験施設では、ビームラインの整備、電磁石用電源据付け等を実施。
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(2)ニュートリノ実験施設では、ND280前置検出器への検出器類の据付けを継続実施。 (3)茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)では試料交換搬送機の調整作業を実施。
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●ニュートリノ実験施設等の運転時検査(5月29日付合格) |
5月28日、ニュートリノ実験施設に対して、国の安全審査である運転時施設検査が(財)原子力安全技術センターにより実施され、29日付けで合格となった。 また合わせてニュートリノビームラインへのビーム蹴りだしに関わる
50GeVシンクロトロン施設、物質・生命科学実験施設のパワー増強に向けた一部装置等についての検査も実施され、2月に実施されたハドロン実験施設も含め、これでJーPARCの全施設が安全審査に合格し、本格的な運転が開始された。
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●平成21年度上期の物質・生命科学実験施設(MLF)の運転実績 |
平成21年度上期の加速器運転は5月11日から6月22日まで行われ、MLFでは17日間のビーム供用運転を実施した。(※供用運転日数のカウントは、午前9時から翌日の午前9時までの24時間サイクルで1日とカウントしています。また、下図の棒グラフは0時から24時までのビーム運転時の出力を示しております。よって、供用日数とは異なる見え方になります。)
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