●非弾性中性子散乱実験の新規手法の実証実験に成功: BL01実験装置 |
物質を構成する原子やスピンは様々なエネルギーで結びつき微小な運動をしている。これら原子やスピンの運動が超伝導体状態などの、物質
が発現する特異な機能と深く関わっている。JーPARCの4次元空間中性子探査装置「四季」(BL01)は、非弾性中性子散乱実験により、主に高温超伝導体における原子やスピンの運動を解明する装置である。図1に示すように、従来の非弾性中性子散乱実験では、利用する中性子は単一の入射エネルギーのみであり、検出器での不感時間が非常に
長くなるため測定効率が低かった。そこで、新しい手法では複数の入射エネルギーの中性子を同時に利用できるよう中性子を選別するチョッパーに工夫を施し、JーPARCで開発した最新のデータ解析システム
を利用して実験を行う事が可能になった。図2は、CuGeO3一次元反強磁性体でのスピンの運動を新しい実験手法で測定した結果であり、1回の測定で4種類の異なる入射エネルギーを使ったデータが得られている。入射エネルギーが小さくなるに従って二次元像が拡大されるとともにデータの分解能が上がっており、広い範囲の概観した測定から狭い範囲を詳しく調べる測定までを同時に行うことができている。本装置は
科学研究費補助金特別推進研究「4次元空間中性子探査装置の開発と酸化物高温超伝導機構の解明」(研究代表者:新井正敏/No.17001001)の助成を受け建設された。
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●第10回ハイパー核及びストレンジ粒子物理学に関する国際会議(Hyp-X) |
9月14〜18日東海村リコッティにて開催、国内外の研究者180名が参加した。会議のテーマは、ハドロン実験施設での主要な研究テーマであるハイパー核及びストレンジ粒子の研究で、JーPARCからは、施設概要、ビームラインや実験装置の整備状況、実験計画などの報告が行われた。また、会議中にはハドロン実験施設の見学会も催され、今秋からの本格的な実験開始に大きな期待が寄せられた。
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●特集:JーPARCの実験装置について |
< 工学材料解析装置「匠」 >物質・生命科学実験施設 BL19
私たちの生活に広く利用されている金属、セラミックス等の実用材料のミクロな内部組織・応力等を、原子レベルで詳しく調べる事ができる装置。大きさ約1m、重さ約1tonの試料まで調べる事が可能で、測定試料に引張・圧縮など外力を加える装置や、高温状態での材料特性を調べる昇温装置等を有している。
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●加速器運転計画 |
10月の加速器運転計画は下記の通りです。尚、運転計画は機器の調整状況により変更が生じる場合があります。
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●50GeVシンクロトロン |
六極電磁石電源配線のノイズ低減のため全72台について配線の繋ぎ変えを実施した。高周波加速空洞ビームラインでは、5台目の加速空洞システムをインストールした。
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●ビームスピル制御用四極電磁石の据付け |
50GeVシンクロトロンからハドロン実験施設へのビーム取り出しで、取り出しビーム波形の平滑安定化のため、ビームスピル制御用四極電磁石※EQ(2台)とRQ(1台)を、9月中旬にビーム取り出し部に据付け、アライメント調整を実施した。
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※スピル制御(「遅い取り出しビーム」波形の平滑安定化)
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50GeVシンクロトロン(MR)からハドロン実験施設への取り出しビームは、約1秒かけて徐々にビームを取り出すことから「遅い取り出しビーム」と呼ばれる。陽子ビーム(荷電粒子)は、リングのビーム閉軌道を横方向に微小振動(ベータトロン振動と呼ぶ)した状態
で周回しながら加速される。そして、加速終了後のビーム取り出しでは、取り出し用の六極電磁石の励磁によりベータトロン振動に共鳴(3次共鳴と呼ぶ)を励起して振幅を増大させ、バンプ電磁石でビーム軌道を静電セプタム(薄い金属の板)に寄せて、振幅の大きな粒子をセプタムによりビーム軌道の外側に向けて、あたかも果物の皮をむくようにビームを取り出す。
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ここで、取り出されるビーム波形(粒子数)の時間構造の安定化を行う目的でスピル制御という手法が取られる。ハドロン実験では安定した矩形波パルス状のビームを必要とするが、取り出し時のビーム波形はガウス分布に近い形となり、またMR電磁石電力系が起源となるリップルがスピル波形に乗る。そのため取り出し四極電磁石(EQ:Extraction Q-magnet)および高速リップル除去用四極電磁石
(RQ:Ripple Q-magnet)を用意し、スピルフィードバックによる励磁を行うことでスピル波形の平滑化を行う。スピル制御の概念図とJーPARCスピルフィードバックシステム構成を以下に示す。今回の装置導入とあわせて、電力系自身のリップルのさらなる低減化も進め、実験で必要とされる取り出しビームの平滑安定化を目指す。
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なお詳細については、JーPARC遅い取り出しスピル制御開発の現状、清道明男氏/KEK (http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~jparchua/share/HUAreport_kiyomichi.pdf)の報告を参照願います。
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●K1.8実験エリア実験準備 |
ハドロン実験施設K1.8ビームラインへ設置の大型ドリフトチェンバーの整備や、ルサイトチェレンコフカウンター等実験用検出器の準備を実施中。
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●ミューオンモニター(T2K実験ニュートリノ二次ビー ムライン) |
T2K実験で、スーパーカミオカンデに向けてJーPARCから送り出すニュートリノビームの方向性・安定性を確認するため、ミューオンのプロファイルを測定する手法がとられる。ニュートリノは、JーPARC加速器からの陽子ビームとグラファイト標的の衝突で得られるπ中間子の崩壊で生成されるが、同時にミューオンも生成されるた
め、ミューオン測定は間接的にニュートリノを観測することになる。一部の高いエネルギーのミューオンはビームダンプ(グラファイト+鉄+コンクリート)を通り抜け、ダンプ直下のミューオンモニターで測定される。ミューオンのプロファイルやフラックスは、陽子ビームのプロファイル、標的への入射位置、π中間子をビーム方向に収束させる電磁ホーンの状態など、ニュートリノビームを生成するための
種々の機器の状況に感度があるため、ミューオンモニターからはこれらの機器の状況やその安定性に関する情報を得ることができる。また、ミューオンモニターは数秒毎に生成される8つのバンチ(時間間隔が約600ns)からなる二次ビームの、バンチごとのプロファイルを測定し、その情報をすぐさま陽子ビームラインにフィードバックすることが可能である。
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ここで、ミューオンモニターは高い放射線環境下でも常に安定した動作が求められ、大強度のビームを測定する必要性から、2つの独立したシステムを用いて冗長性、重複性のある測定を行っている。検出器にはK2K実験で共に実績がありシンプルな構造のシリコンフォトダイオード
とイオンチェンバーという2つの組合わせが採用された。前者の検出器は、特にビーム強度の弱いコミッショニング時から使用され、後者は検出器電離ガスにアルゴンガスかヘリウムガス(Arガスの約1/10の信号量)を使い分けることによって、広いビーム強度領域の測定が可能である。
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検出器1:シリコンフォトダイオード |
ミューオンモニターの1つ、シリコンフォトダイオードは、図2(b)に示す様に、7列7段に250mmピッチでビーム進行方向に直角に配置されている。ダイオードの有感面積は10×10mm2。
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検出器2:イオンチェンバー |
もう一方のミューオンモニターは、約2mの直方体筒状の箱形容器の中に7台のイオンチェンバーが組込まれ、両端がフランジで封じ切られ電離ガスを一定流量流せる構造で、各電極の有感面積は75×75mm2となっている。
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