■ J-PARC News 第40号より       (2008/7) 
●世界最高の波長分解能を達成:超高分解能中性子回折装置SuperHRPD
 物質・生命科学実験施設の中性子利用ビームラインBL-08に設置したSuperHRPDが機器調整中の平成20年6月末、世界最高の分解能となる0.037%を達成した。これは英国ラザフォード・アップルトン研究所が持つ同種装置の分解能0.05%を上回る値で、世界有数の高性能な実験装置であることが確認された。
 本装置は、物質構造科学研究を推進することを目的に開発が進められたもので、物質の結晶構造を詳細に調べることが可能となり、マルチフェイロイック物質や強相関物質などに関する最先端研究への貢献が期待される。装置は、核破砕により生成した中性子を超臨界液体水素減速材で実験に適するエネルギー(数meV〜1eV)にまで減速し、断面が四角形の中性子導管となるスーパーミラーで約100メートル先の装置へ導き込み中性子回折実験を行うもの。

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●物質・生命科学実験施設の実験課題の募集を開始(平成20年度後期分)
 平成20年度後期分のJ-PARCのパルス中性子やミュオンビームを利用した実験課題の募集が下記のように開始されました。

利用期間:平成20年12月5日〜平成21年2月28日(予定)の期間中で、20日間程度
募集期間:平成20年7月8日〜8月31日17時
連 絡 先:J-PARCセンター業務ディビジョン 利用業務セクション ユーザーズオフィス
TEL: 029-284-4856 FAX: 029-282-5996 Mail: j_proposal@ml.j-parc.jp

 尚、詳細についてはhttp://j-parc.jp/MatLife/ja/applying/koubo.html(J-PARC HP)をご覧ください。 また、茨城県中性子ビーム実験装置の実験課題も募集が開始されますので、併せてhttp://www.sf21-ibaraki.jp/whatsnew/new_bl_kobo.html(茨城県HP)をご覧ください。

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●遅い取り出し機器の性能試験状況
 50GeVシンクロトロン(MR)からハドロン実験施設への陽子ビーム取出し部には、バンプ電磁石(BUMP)、静電セプタム(ESS)、セプタム電磁石(SMS1、2&3)が配置される。
 現在、それら機器の各種試験がKEKつくばで実施されている。ESSのエージングを兼ねた高電圧試験、SMS1&2の磁場測定・温度測定、SMS3の励磁試験などを実施、準備中である。夏頃を目処に試験を終了させ、その後J-PARCに運び込みMRに据付ける。
 リングを周回するビームはバンプ電磁石によってESSセプタム面に寄せられる。次にビームのx方向のビームサイズを大きくし、セプタム面を越えたビームは電場によりキックされ周回ビームから分離される。 そして、取り出しビームをセプタム電磁石でさらに曲げてスイッチヤードと受け渡すが、一気に必要な角度まで取り出しビームを曲げることが出来ないので3種類・10台の電磁石で少しずつビームを曲げていく。それが低磁場セプタム電磁石(SMS1×2台)、中磁場セプタム電磁石(SMS2×4台)、高磁場セプタム電磁石(SMS3×4台)。
 詳細については、次のホームページでご確認願います。http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~jparchua/share/HUAreport_RMuto.pdf [PDF: 941KB]

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●中性子回折による結晶構造の解析
 結晶のような周期的な原子配列構造を持つ物質に中性子を入射した場合、中性子はX線と同様に回折する。しかし表面で反射されるX線と違い、中性子は試料表面から数ミリないし十数ミリと試料の中にまで入り込む事ができるため、物質内部の結晶配列や磁気構造情報の取得が可能となる。更に、機能性材料に重要な役割を果たす軽元素(水素、リチウム、酸素など)の正確な位置の決定が可能となり、材料開発(リチウム電池材料、燃料電池材料、水素貯蔵合金、磁性材料など)に非常に有効なツールとなる。
 以下に、J-PARCの中性子回折装置で得られたシリコン結晶の格子面間隔のデータ、シリコン結晶・原子の構造概念図、及び、中性子回折法の原理を簡単に示す。

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●施設建設状況
(1) 加速器関連
 7〜8月は加速器装置、周辺機器・設備の保守点検期間のため加速器運転を停止中。
(2) 実験施設関連
 物質・生命科学実験施設は、中性子ビームライン、ミュオンビームライン整備を継続中。原子核素粒子実験施設は、陽子ビームダンプの据付け工事と、2次粒子ビームライン整備を継続中。ニュートリノ実験施設は、ターゲット収納部の鉄遮蔽体設置工事、崩壊領域設備の地下部工事を継続中。ニュートリノモニター棟では建屋工事が開始された。

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●パワーブレンダー工法採用(セメントと土混ぜ固める)
 ニュートリノディケイボリュームの下流部では、原設計のコンクリート置き換え基礎に代わってパワーブレンダー地盤改良工法による直接基礎が採用されている。この工法は、総合評価落札方式による入札時に、現請負者(飛島建設)によって技術提案が行われ、厳正な審査を経て採用された工法である。平成20年6月末現在、約80%の工事が完了した時点ではあるが、構造物の沈下がほとんど観測されていない良好な状態にある。
 ディケイボリューム及びハドロンダンプ設置部となる地下構造体は、高さ24m、幅15m、奥行き44m。工事の基盤層深さが最大でも30m強で、杭を打つには浅すぎた。また、基盤層までの全体をコンクリートベースとするとコスト高になる。ここで採用されたパワーブレンダー工法は、セメントと水を混ぜたセメントミルクを現位置の土とかき混ぜて地盤を固めるもので、大規模な掘削や大深度の土留め壁などが不要となるためコストの削減が図れると同時に、大幅な工期短縮に貢献している。

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●渡海文部科学大臣、山東参議院副議長他ご視察
(1) 山東昭子参議院副議長:平成20年6月27日
 原科研への訪問は科学技術庁長官時代にJRR-3をご視察されて以来2度目となった。

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(2) 尾見幸次衆議院議員(茨城県):平成20年7月3日
(3) 郡司彰、内藤正光、藤田幸久参議院議員(茨城県):平成20年7月9日
(4) 石井啓一衆議院議員:平成20年7月15日

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(5) 渡海紀三朗文部科学大臣:平成20年7月18日

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(6) 中村修二教授(カルフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)):平成20年7月1日
 青色発光ダイオードの開発(1993年11月発表)で有名な中村修二氏は、現在、カルフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)材料物性工学部の教授で、学生の指導と共に窒化ガリウムを使ったデバイスや材料について研究を行っている。その中村教授がJ-PARCの視察に来られた。また、同日原子力機構が開催したセミナーにおいて日米の研究環境等の違いを熱く講演された。
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