■ J-PARC News 第91号より       (2012/10) 
●J-PARCの利用運転再開
  J-PARCは、7月〜9月の長期メンテナンスを終了し、9月28日から加速器運転を開始した。その後、加速器チューニングやスタディなどを進め、10月17日には、実験施設へのビーム受け入れ試験などを行い、18日21:00から実験施設の利用運転を再開した。

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●超高圧中性子回折装置「PLANET」完成式典
  物質・生命科学実験施設の中性子ビームラインBL11に、高圧下における物性研究を行うための中性子回折装置「PLANET」が、 JAEA、愛媛大学、東京大学により建設された。9月27日には、装置の完成を祝い関係者による完成式典が開催された。「PLANET」は、20 GPa、2000℃という地球内部の上部マントルに相当する圧力・温度条件を大型マルチアンビル装置「圧姫」で生み出すことが可能で、水素位置を特定することに優れた中性子の特性を生かし、様々な温度・圧力条件下で含水鉱物等の構造変化を調べ、 地球内部 (上部マントルや地殻内) での水の挙動・地球化学的サイクルを理解しようとするものである。今回の完成式典では、領域代表の挨拶の後、建設に関わった業者の方々へ感謝状が授与され、国内外の研究者から「PLANET」に期待することが紹介された。その後、実験ホールに場所を移し、テープカット、記念撮影会および装置見学会が行われた。

  最後に、「PLANET」は科学研究費補助金 新学術領域研究「高温高圧中性子で拓く地球の物質科学」 (領域代表者:東京大学名誉教授、愛媛大学特命教授 八木 健彦) 及び科学研究費補助金 学術創成研究「強力パルス中性子源を活用した超高圧物質科学の開拓」 (研究代表者:鍵 裕之 東京大学教授) を資金として、物質・生命科学実験施設に建設された、高圧実験専用の中性子粉末回折計である。

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●QENS/WINS2012国際会議開催 (9月30日〜10月4日) 
  中性子準弾性散乱測定法を用いた物性研究に関する国際会議と、非弾性散乱分光器に関わるワークショップの合同国際会議を、J-PARC他4団体の主催のもと日光総合会館 (栃木県日光市) で開催した。参加者約100名 (国外55名) 。基調講演5件、招待講演45件、一般講演14件、ポスター発表40件。ソフトマター、イオン伝導体、磁性体など先端的な非弾性散乱研究の成果とJ-PARCをはじめとする世界各国で建設が進む中性子実験施設の分光器開発の成果が発表されるとともに、今後進むべき方向性に関して活発な議論が行われた。
  *Nikko Joint Conference between 10th International Conference on Quasielastic Neutron Scattering (QENS) and 5th International Workshop on lnelastic Neutron Spectrometers (WINS)

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●J-PARCへのユーザー来所者の推移
  平成20年12月の施設利用開始以来、多くのユーザーがJ-PARCを訪れている。今年8月末までのユーザー来所者の総数 は、延べ87,817人・日となった。これまでの来所者数を月毎に集計したグラフを右に示す。平成21、22年度の来所者数は、それぞれ年間約3万人・日であった。平成23年は震災のため9カ月間運転が停止となり来所者は減少したが、平成24年1月の利用運転再開以降、来所者は震災前と同程度まで回復した。

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●加速器運転計画
  11月の運転計画は、下記の通りです。2012B期の施設利用は、21日からとなります。尚、運転計画は、機器の調整状況により変更が生じる場合があります。詳細は、J-PARCホームページの「J-PARCの運転計画」
http://j-parc.jp/ja/Operation/Operation-j12_0903_Shalf.htmlでご確認願います。


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●実験施設関連
  物質・生命科学実験施設 (MLF) の各ビームラインでは、利用運転再開に向け、装置の性能アップ、実験準備などを進めた。例えば、BL03の茨城県生命物質構造解析装置「iBIX」では、これまで中性子検出器14台で実験を進めてきたが、今回、検出器の 性能アップを行うとともに、更に検出器16台を増設し、合計30台とした。また、新規に建設されたBL11の超高圧中性子回折装置「PLANET」では、6軸大型プレス機のコミッショニングを進め、利用運転の準備を行った。

  また、ハドロン実験施設では、KLビームラインのKOTO実験装置の組立てが進み、検出器及び検出器信号の取出し機器などの設置作業が行われている。

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●第4回J-PARC/MLFシンポジウム、茨城県ビームライン平成23年度成果報告会
  10月10-11日に日本科学未来館で、「第4回J-PARC/MLFシンポジウム」と「茨城県ビームライン平成23年度成果報告会」が約200名の参加者を集めて合同開催された。物質・生命科学実験施設は、震災から復旧し、今年1月から利用運転を再開し ている。2日間開催のシンポジウムでは、実験装置の現状、利用研究や装置開発の成果などがそれぞれ紹介され、さらに今後の研究の進展に向けて活発な議論が繰り広げられた。初日の講演終了後には、J-PARC/MLF利用者懇談会総会が開催され、今年度の活動計画などが紹介された。また、2日目の午後には、「茨城県ビームライン平成23年度成果報告会」が並行して開催 され、茨城県の装置の現状報告や研究成果の紹介が行われた。MLFシンポジウムと同時に開催することで、関係者の相互理解や交流も図られた。シンポジウムの最後には、MLFへの要望などについて意見が交わされた。主催は、J-PARCセンター (JAEA/KEK) 、茨城県、日本原子力研究開発機構、高エネルギー加速器研究開発機構 物質構造科学研究所、総合科学研究機構 (CROSS) 。

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●文化財科学講演会 (9月28日/東京)  〜放射光・中性子で文化財を探る〜
  文化財の調査研究では、その対象を傷つけて調べることができない場合が多く、非破壊的手法が非常に有効である。講演会では、放射光や中性子を利用した研究成果の紹介が6件行われた。J-PARCセンター中性子利用セクションの神山崇リーダー (KEK教授) からは「中性子を用いた縄文式土器の研究」と題して、中性子回折による非破壊測定などが紹介された。講演 会最後に、主催者から今後は関連する施設の連携をとり合い、文化財調査を推し進めたいとの抱負が語られ、講演会を結んだ。本講演会は、理化学研究所、高輝度光科学研究センター、高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 、および総合科学研究機構の主催で開催された。

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●JAEA理事長表彰「研究開発功績賞」受賞 〜新規希土類金属水素化合物の発見〜
  放射光と中性子の相補的利用による研究で希土類金属に新たな水素化合物を発見した、量子ビーム応用研究部門 高密度物質研究グループの町田晃彦 (受賞者代表) 、綿貫徹、服部高典、佐野亜沙美の各氏が、画期的研究開発に係る業績として「研究開発功績賞」を受賞、10月15日にJAEA理事長表彰を受けた。
  中性子を使った実験は、J-PARC/MLF高強度全散乱装置「NOVA」を利用しての研究成果である。詳細は、J-PARC News 第86号 (平成24年5月25日発行) 、「レアアースメタルの新しい水素化物発見」に「NOVA」が活躍!をご覧ください。http://j-parc.jp/ja/news/2012/news-j1205.html


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●ご視察等
   9月 26日  国際結晶学会 高圧ワークショップ参加者
   10月 18日  白川哲久JASRI理事長
    10月 19日  福島県伊達市役所市民生活部 半澤隆宏次長
    10月 19日  ベトナム労働総連合代表団

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