■ J-PARC News 第103号より       (2013/11) 
●J-PARC事故後の取組に関する住民説明会を開催 (10月31日〜11月2日) 
  J-PARCセンターは、ハドロン実験施設における放射性物質漏えい事故を踏まえ、再発防止などの取組に関する住民説明会を、東海村で3回開催しました。県内外から延べ85名の方にご参加いただきました。説明会冒頭、J-PARCセンターより改めて事故についてお詫び申し上げ、事故後のJ-PARCセンターが取り組んできました再発防止策や安全管理体制の強化策、金標的の調査について報告致しました。その後の質疑応答では、皆様からの多くのご質問にお答えするとともに、貴重なご意見を伺いました。



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●放射線業務従事者教育訓練 (11月7日) 
  J-PARCセンターでは事故を受け規程類の見直しを行い、放射線障害予防規程などの改正、新たに事故等通報規則の制定を行いました。これらの規定の改定内容を周知するため、7日に放射線業務従事者教育訓練を行い、受講者の理解度を確認するテストも実施しました。また、原子力規制庁の担当者が教育訓練の状況を視察され、その後、諸規程の改定内容、事故再発防止策の実施状況などの現地調査が行われました。



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●「J-PARC非常事態総合訓練」を実施 (11月15日) 
  J-PARCセンターは事故再発防止対策として、異常の兆候を見逃さないよう、従来の「基本体制」と「非常体制」の間に「注意体制」を新設しました。今回の訓練は、物質・生命科学実験施設 (MLF) で水銀漏えいを感知するモニターが異常信号を出したという想定で実施されました。注意体制を設定、現場での状況確認、判断により事故体制に移行する、新しい緊急時の手順に従って訓練が進み、MLFの制御室に事故現場指揮所、原子力科学研究所の安全管理棟に事故対策本部を設置しました。この訓練には、茨城県や周辺自治体関係者がご視察に来られ、プレスによる取材も行われました。

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●文部科学省 群分離・核変換技術評価作業部会 (10月23日、30日) 
  標記部会では、本年8月より高レベル放射性廃棄物中に含まれる長寿命放射性核種の群分離・核変換技術研究の研究開発の妥当性や今後の進め方などについての評価、検討を進めてきた。10月23日に開催された第4回会合では、J-PARCに建設予定の核変換実験施設の整備を含めた今後の研究開発のロードマップ等が審議され、同月30日の第5回会合では、中間的な論点のとりまとめ案が審議された。核変換実験施設については、次のステージに移行していくことが適当とされており、施設の整備に向けた方向性が示された。欧州のADS開発に関るMYRRHA計画についても、参画に向けて関係国と調整を始めることが適切であるとされた。また、今後のチェックアンドレビューを、本作業部会で適時実施していくことが確認された。作業部会での資料及び中間的な論点のとりまとめは、 文部科学省のホームページでご確認下さい。



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●核変換実験施設建設及び欧州MYRRHA計画に関する協力についての意見交換 (10月下旬〜11月上旬) 
  加速器駆動核変換システム (ADS:Accelerator Driven System) は、鉛・ビスマス標的に陽子ビームを入射して生成される核破砕中性子を利用して、核変換対象核種を燃料とする未臨界炉心を駆動する。ADSは、J-PARC建設当初からその必要性を提案し続けてきたもので、10月30日の文部科学省群分離・核変換技術評価作業部会において、施設整備の妥当性の確認とともに次のステージへの移行が適切であるとされた。現在、J-PARCでは高温で流動する鉛・ビスマス合金中での材料腐食試験や、計測制御機器の要素技術試験などを実施している。欧州においてもADSの研究開発が継続的に進められており、欧州枠組みプログラムの中で鉛・ビスマス取技術に関する開発を実施している。カールスルーエ研究所 (ドイツ) は、その中核的な研究機関として大型の鉛・ビスマス試験ループKALLAを保有し、多様な実験を行っている。また、ベルギー原子力研究センター (SCK・CEN) では、最大出力100MWの実験炉級ADSの実証を目指すMYRRHA計画が進められている。今回、J-PARCでADS開発を担当する核変換セクションの佐々敏信サブリーダーは両施設を訪問し、核変換実験施設建設及びMYRRHA計画に関する協力についての意見交換を行った。KALLAの材料腐食試験ループでは、鉛・ビスマス中の酸素濃度を制御した条件下で長期にわたる試験が実施されている。J-PARCの試験ループで課題となっている、酸化物や析出物の配管内固着は発生しておらず、酸素濃度制御が必須の技術であること、鉛・ビスマスターゲットの容器材料としての316ステンレス鋼の妥当性、伝熱流動試験ループにおいて準備が進められているMYRRHA用燃料集合体に関わる試験などについて意見交換を行った。SCK・CENでは、文部科学省の作業部会での検討の経緯とともに、中間的な論点のとりまとめ案に基づく評価の概要を説明し、今後の研究協力のあり方に関する議論を行った。MYRRHA計画実施の要件の一つであるベルギー以外の国からの計画参画に関しては、欧州連合、ドイツ、フランス、英国、イタリア、中国などが高い関心を示しており、日本の取組に関する評価結果が、関心を持つ国や機関に良い影響を及ぼすことが期待される旨の説明があった。SCK・CENでは、既存の鉛・ビスマス試験用装置に加え、複数の試験ループの製作、酸素濃度制御試験等、MYRRHA計画に向けた様々な試験が進められており、これらに関する意見交換を行うとともに、今後も引き続き協力関係を深めていくことが議論された。

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●日豪中性子科学ワークショップ「Sharing Science with Neutrons」 (11月5-6日) 
  日豪2国間の中性子科学ワークショップ「Sharing Science with Neutrons」が、オーストラリアの科学アカデミー (AAS) 、原子力科学技術機構 (ANSTO) の主催、J-PARCの協力の下、シドニー郊外のANSTO原子炉施設OPALにて開催された。このワークショップ (WS) は、ANSTOとJ-PARCの間で、中性子科学の分野の協力協定が締結されるのを機会に開かれたもので、2012年8月に東京で開催された日豪科学技術会議で、ANSTOのブラッグ研究所所長Rob Robinson氏とJ-PARCの新井正敏物質・生命科学ディビジョン長 が、中性子などを用いた結晶科学に関わる両国間の友好関係のさらなる発展、協力関係、新分野へと拡げたいとの思いから実現したものである。

  WSは、AASの副委員長Chemnupati Jagadish氏と日本外務省在オーストラリア大使館の大月光康一等書記官による開会の挨拶と、新井ディビジョン長とANSTOのAdi Paterson機構長のウェルカムトークで始まった。日本からの参加者は、J-PARCセンター、日本原子力研究開発機構、高エネルギー加速器研究機構、総合科学研究機構、東京大学など5大学から総勢17名、オーストラリアからは、AAS、ANSTO、豪州各大学から副学長クラスの教授3名を含む多くの研究者が参加し、両国の施設や装置の最新情報についての報告、それぞれの専門分野の先端的研究成果についての講演と意見交換が行われた。また、双方の研究者がお互いを良く知ることができるよう、参加者の研究歴を載せた概要集の製作、親睦会における研究分野の近い研究者を隣接させたシートアレンジ、OPAL原子炉見学では興味のある部分を少人数でじっくり見せるコース分けなどの工夫があった。WSからはANSTO側の配慮と意気込み、また、両国の日豪協力への大きな期待と熱意が窺われた。

  日本とオーストラリアは、放射光や中性子科学などの量子ビームの分野において長年にわたる交流があり、最近では、J-PARCの中性子実験装置の利用者も確実に増加傾向にある。一方、東日本大震災でJ-PARC、JRR-3が運転停止を余儀なくされた際には、ブラッグ研究所をはじめ世界の多くの中性子施設が、日本での中性子利用実験採択課題を受け入れ、実施して頂いた。


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●平成25年度茨城県中性子利用促進研究会・磁石材料のその場構造解析分科会 (10月22日) 
  物質・生命科学実験施設 (MLF) 中性子ビームラインBL20の茨城県材料構造解析装置「iMATERIA」では、高温雰囲気、ガス雰囲気などの諸条件下における磁石材料のその場 (in-situ) 構造解析研究が計画されている。現在、茨城県プロジェクト研究と元素戦略プロジェクト磁性材料研究拠点では、その基礎研究として磁石材料 (Nb (Dy) FeB系など) を使った研究開発を進めている。今回、茨城県中性子利用促進研究会などは、これらの研究を推進するために必要な基礎を固める議論や検討を行うため、10月22日に東京のエッサム神田ホールで分科会を開催した。分科会では、iMATERIAの性能、磁気構造解析の基礎知識、粉末磁気構造解析プログラムの利用例などについて各講演者が詳しく報告し、活発な質疑応答が行われた。


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●国際協力による、3He中性子検出器の代替器・シンチレータ検出器の開発
  J-PARCの物質・生命科学実験施設 (MLF) は2008年5月に初めて中性子生成に成功し、現在、世界最高強度のパルス中性子が利用できる施設となっている。MLFの検出器開発グループは、MLFで得られるパルス中性子を最大限利用できる、高性能中性子検出器の開発を進めている。

  検出器開発では、30年以上の施設運営実績を有する英国ラザフォード・アップルトン研究所 (RAL) の中性子・ミュオン研究施設ISIS検出器開発グループと、2005年から継続的に研究協力を進めており、2008年からは国産化したISIS型1次元シンチレータ検出器がMLFの中性子実験装置 (BL19) で8台が稼働中である。また、2次元シンチレータ検出器の開発では世界に先駆けてシンチレータと波長シフトファイバを用いた検出器を独自に開発し、実用化に成功した。今では、中性子実験装置 (BL03、BL17、BL18) で、全69台が稼働中である。

  近年のヘリウム3ガス (3He) の供給不足に端を発する3He中性子検出器の代替検出器として、シンチレータ検出器の開発をRAL (英) が取りまとめ、J-PARC (日本) 、Jülich (独) 、SNS (米) 、NIST (米) 、PSI (スイス) の各施設関係者が、国際協力の下で連携し進めている。J-PARCでは、他に先行して開発した波長シフトファイバ型シンチレータ検出器が実機稼働しており、その計測技術や運用実績は、今後、国際的な連携・協力の強化により、検出器開発がさらに進展するものと期待されている。

  10月24日、ISISで検出器開発に携わるNigel Rhodesリーダーら3名がJ-PARCを訪問し、検出器開発現場を見学、情報交換や今後の開発に関する活発な議論を交わした。また、MLFでは、各装置担当者から説明を受け意見交換を行った。更に、11月7日にはユーリッヒ研究所で検出器開発を進めるRalf Engelsグループリーダーが来訪した。


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●ご視察等
     10月24日    英国ラザフォード・アップルトン研究所 (RAL) 中性子・ミュオン研究施設ISIS
               Nigel Rhodes検出器開発グループリーダー他
     10月30日    Michael Turner APIF議長、Hans-Juergen Donath氏 (DESY) 
     11月 7日     ドイツユーリッヒ研究所 Ralf Engels検出器開発グループリーダー
     11月13日    八戸良城 青森県エネルギー総合対策局長
     11月14日    村田憲俊 北海道道議会議員
     11月21日    磯谷桂介 文部科学省大臣官房審議官

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